2014 Fiscal Year Research-status Report
アルカン合成酵素群の革新的活性評価法開発と高速人工進化
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26870136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 勇樹 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (90444059)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルカン合成酵素 / 進化分子工学 / バクテリアルシフェラーゼ / アシル輸送蛋白質還元酵素 / アルデヒド脱炭酸酵素 / アルカン生産 / バイオエネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、進化分子工学的手法を用いて、アルカン合成に関わる2つの酵素、アシルACP還元酵素(AAR)とアルデヒド脱炭酸酵素(AD)の高活性化を行い、大腸菌によるアルカンの大量生産を目指す。進化分子工学によるAAR、ADの高活性化を行うためには、多数の変異体を作成し、その中から目的の機能を持つ変異体を迅速に評価、選択する必要がある。そのために、10000種以上の変異型AAR、ADの活性を迅速・簡便に評価できる画期的な活性評価法の開発を行う。 当該年度では、AAR活性評価法の開発を行った。AARにより生成されるアルデヒドを基質として、バクテリアルシフェラーゼ(BL)は発光反応を呈する。そこで、2種類のAARとBLの大腸菌共発現系の構築し、大腸菌で共発現を行った。その結果、培養状態で大腸菌の発光を確認でき、その発光はAARの発現依存的であったことから、AARの活性を発光で検出することに成功した。一方で、error-pronePCR法を用いて変異型AAR、AD集団の作製方法も確立し、進化分子工学によるAAR、ADの高活性化の準備は整いつつある。 上記研究と並行して、進化実験に用いるADの初期配列について検討した。ADには3つのシステインが存在する。システイン残基は、蛋白質の凝集体形成や変性の原因となる危険性があることから、システインを持たないADを進化実験の初期配列することが可能か検討した。そこで、ADの3つのシステイン残基を組み合わせで欠損させた変異体を作製し、各システイン残基について、構造安定性や活性への寄与を評価した。その結果、71番目のシステインは、ADの活性には必要であり、構造安定性にも寄与していることが明らかとなり、その結果を投稿論文として報告した(Hayashi Y. and Arai M., PLoS ONE, 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度において、AARとBLの共発現系の構築は完了し、AARの活性評価法の開発は予定通り進行している。進化分子工学によるAARの高活性化は、平成27年度に予定していたADの活性評価法の開発と入れ替えて進めた。ADの活性評価法は、当初計画していた方法とは別に、より選択性と感度の高い新たな手法を検討している。一方で、次年度に行う予定であった変異体集団ADの構築を前倒しし、当該年度に予定していた変異体AAR集団の構築と合わせて条件検討を行い、その手法は確立できたことから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度において、発光を用いたAARの迅速活性評価法を用いた進化分子工学によるAARの高活性化を行う。並行して、ADの迅速な活性評価法の開発を完了し、続いて進化分子工学によるADの高活性化を行う。最終的には、高活性化AAR、ADを用いた大腸菌によるアルカンの大量生産を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度に、AAR活性としての発光を検出するために高感度発光蛍光撮影装置の購入を予定していた。しかし、吸光発光蛍光測定用マルチプレートリーダーを用いることで、吸光測定による大腸菌の菌体量を、発光測定によるAAR活性を同時に定量することが可能となり、より定量的なAARの活性評価が可能となる。また、ADの活性評価としての蛍光測定もより定量的になる。そのため、改めて機器の選定を行うこととなり、時間を要したため、次年度の使用額に変更が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、AAR、ADの活性評価に用いる吸光発光蛍光測定用マルチプレートリーダーの早期購入を予定している。AAR、ADの進化実験に必要な試薬と消耗品、進化実験により得られる多数の変異体AAR、ADのDNA配列受託解析と、得られた高活性化AAR、ADの活性測定をより定量的に行うためGC-MS測定用の消耗品の購入に予算を計上している。
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