2014 Fiscal Year Research-status Report
本格的再生医療への応用を目指した自発的還流機能を有する3次元マクロ組織の作製
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26870137
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩永 進太郎 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (70587972)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 組織工学 / 再生医療 / バイオマテリアル / マイクロ流体デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではマイクロ流体デバイスを利用した灌流可能な組織の作製を試みる。本年度はひも状に加工した細胞集塊を、後から分解可能な犠牲層担体に巻き付けることで管状組織の作製を試みた。 細胞から組織を構築する際に、足場材料に細胞を播種して組織構造を作製するトップダウン型の組織工学が多く研究されている。足場材料を用いる方法は非常に簡便ではあるが、内部にまで均一に細胞を播種することが困難であり、また一様に播種するため、異なる細胞の階層化も難しい。一方で、スフェロイドなどの微小な細胞集塊を作製し、それらを集積化することで組織構築を試みるボトムアップ型の組織工学が近年注目を集めている。そこで、本研究ではマイクロ流体デバイスを利用し、ひも状に加工した細胞集塊を用いて組織作製を試みた。二軸同時軸のマイクロ流体デバイスで、外側にアルギン酸ナトリウム溶液、内側に細胞外マトリクス(ECM)に懸濁させた細胞を流し、塩化カルシウムでゲル化させることで中軸部分にECMと細胞を内包したゲル状の構造体(細胞ファイバ)を得た。細胞密度100000000 cells/mLで作製した細胞ファイバを培養すると2-3日程度で内部細胞が増殖し充填されるのを確認した。十分に充填され、細胞同士の接着が形成された頃に、酵素を用いて外殻のアルギン酸を分解したところ、細胞塊がひも状形態を維持していることが確認された。この露出されたファイバ状の細胞塊を、同じマイクロ流体デバイスで作製したアルギン酸のみからなるゲルファイバにピンセットを用いて巻き付けたところ、細胞ファイバ同士が接着して、巻き付けた形を維持したままの構造体を作製することが可能であった。24時間ほど培養すると細胞同士が接着し、らせん状に巻かれていた構造の境界線がわからなくなるほど一体化することが確認された。これらの結果より、本手法によって簡便に高細胞密度な管腔状の構造を作製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
管腔状組織作製のために、細胞ファイバと犠牲層担体を用いているが、どちらも同じマイクロ流体デバイスで作製することが可能であり、すでに安定してファイバを作製する技術が確立していたため、巻き付ける工程の試行錯誤に十分な時間を費やすことが可能であった。また、一度に多くの量を作製することが可能なため、様々な細胞で同様に管腔状組織の作製が可能であることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、犠牲層担体に細胞ファイバを巻き付けることで管腔状組織構造体を作製することに成功した。しかし、構造体作製後に犠牲層を分解除去すると、構造体がつぶれてしまうなどの問題が発生した。そこで、今後は構造体がより安定な状態になるまで培養が可能なように、犠牲層担体を中空状構造とし、犠牲層を分解しなくても培養液を灌流可能な構造を作製することを試みる。また、異なる細胞ファイバを用いて階層化された組織構造体の作製を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度に参加した国際学会の一つが国内で行われたものであり、旅費にさほど費用が必要とされなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は材料の改良などを行う予定であり、試薬等の消耗品へあてる。またマイクロ流体デバイスの作製に必要な装置の購入および、ヒト不死化血管内皮細胞の購入などを予定しているため、その購入費へ使用する。
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Research Products
(3 results)