2014 Fiscal Year Research-status Report
高効率有機薄膜太陽電池を指向した近赤外光吸収材料の開発
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26870144
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
古川 俊輔 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (70625590)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 近赤外光吸収材料 / キノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高効率有機薄膜太陽電池を指向した,近赤外光のみを選択的に吸収するドナー材料の開発を目的としている.キノイド型π共役化合物は,HOMO-LUMO遷移に由来する光吸収が極めて強く,長波長吸収を示すため,近赤外光のみを選択的に吸収する手段として有望である.しかしこれまでのキノイド型分子は,ドナー材料としての利用上,主として以下の2点が課題であった.1) 開殻構造の寄与により化合物の安定性が低下し,マテリアル応用に適さない.2) 安定なキノイド型分子の多くは電子吸引性置換基を有し,ドナー材料としての応用に適さない.初年度は,これらの課題を克服すべく,新規キノイド型分子を設計・合成し,ドナー材料としての評価を行った. 新規に設計・合成したキノイド型分子は,熱的に安定であり,かつ近赤外領域に選択的に強い光吸収を示すことを明らかにした.合成した化合物群の示唆熱-熱重量分析を行ったところ,熱分解温度は220 ℃以上であり,ドナー材料への応用に展開可能な十分な熱安定性を有していた.また,合成した化合物の薄膜を作成し,イオン化ポテンシャルの評価を行ったところ,ドナー材料として適切な値(4.70-4.90 eV)を有することを明らかにした.さらに,新たに開発したキノイド型分子を有機薄膜太陽電池のドナー材料として利用し,890 nmまでの近赤外領域におよぶ光電変換を達成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の当初の達成目標は,近赤外光領域に光吸収をもつドナー分子の合成・評価であったが,現在の進捗状況はこの段階を大きく超えている.合成した化合物群は実際に近赤外光領域に選択的に強い光吸収を示し,さらにこれを有機薄膜太陽電池のドナー層へと活用することで,近赤外光領域での光電変換を達成することに成功している.このように,分子設計における新規コンセプトの確立は既に達成され,使用する分子の最適化や素子の高効率化といった次のステージに突入している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の第一段階目標である,近赤外光のみを選択的に吸収する分子の設計・合成およびドナー性の評価は既に達成している.今後は合成した新規化合物群を有機薄膜太陽電池の活性層材料と活用し,更に高効率な素子の開発に向けた新学理の構築を目指す.具体的には,ドナー分子の電荷移動度の向上,イオン化ポテンシャル/電子親和力の調節,太陽電池素子構成の変更などの項目を掲げる.これを通じて有機エレクトロニクス分野に波及効果をもたらす新学理の探求を行う.
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