2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870145
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 浩道 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (70609205)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際法と国内法 / 国際法の国内実施 / 国際義務と権限配分 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず,David Sloss, The Role of Domestic Courts in Treaty Enforcement (Cambridge, 2009), Andre Nollkaemper, National Courts and the International Rule of Law (Oxford, 2011)等の先行研究を手がかりにして,本研究に関わる諸外国の国内判例のうち,未検討であるものを入手し,丁寧に分析しながら読み込んでいく作業を行った。 さらに,Anne-Marie Slaughter, A Global Community of Courts 44 Harv. Int'l L. J. 191, Claire L’Heureux-Dube, The Importance of Dialogue: Globalization and the International Impact of the Rehnquist Court, 34 Tulsa L. J. 15 (1998) 等で近年盛んに論じられている「グローバルな裁判所共同体」,「裁判官の対話」という新しい動向についても,学説と裁判例の調査をすすめた。 このような作業を通じ,アメリカ合衆国,ドイツ,フランス,イギリス,中国,日本を中心として,国際義務の国内実施に関する権限配分のあり方につき実証的な比較法的考察を行い,それをもとにして,日本における従来の理論枠組みを批判的に検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの研究は,助教論文の形にまとめ,国際法研究会において報告するという形で,一定の成果をあげることができた。特に,この作業の過程においては,すでに比較的研究が進んでいる欧米諸国のみならず,未だ十分に知られていない中国の実情に迫ることができ,非常に有意義であったと考えている。しかし,中国については,裁判例が入手困難であったり,文献資料と実情の乖離といった様々の困難により,論文の形で成果に結びつけるには,さらにより立ち入った調査が必要と考えられる。この点に留意しつつ,引き続き,検討を続けていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,国際義務の国内実施をめぐる権限配分のあり方につき,助教論文の加筆修正の形で,実証的検討の精密さをさらに向上させる作業が必要である。その作業と合わせて,従来の欧米中心の研究成果を相対化するためにも,台湾や韓国の実行を調査することも重要だと考えており,今後はそれらの諸国にも比較法的考察の対象を広げていく予定である。 さらに,助教論文において注目した「グローバルな法律家共同体に対する説明責任」の概念について,より精密にその理論的基礎を探究する必要があると考えている。そのためには,法的拘束力の有無という視点と,説明責任という視点を関連づける理論的視座が必要であり,この点に関する研究を続けて行く予定である。
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