2014 Fiscal Year Research-status Report
麻疹ウイルスベクターを利用した高病原性鳥インフルエンザウイルスワクチンの開発
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26870147
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤幸 知子 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50610630)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 麻疹ウイルス / ウイルスベクター / 高病原性鳥インフルエンザウイルス / ワクチン / H5N1 |
Outline of Annual Research Achievements |
HPAIV の抗原タンパク質 HA を発現する組換え麻疹ウイルス (rMV-Ed-HA) のインフルエンザ発症防御に対する効果を検討するため、rMV-Ed-HA を接種したカニクイザルを HPAIV で攻撃感染させ、インフルエンザの代表的な臨床症状である発熱および呼吸器症状を観察した。テレメトリーシステムによって体温をモニタリングした結果、rMV-Ed-HA 接種個体では発熱が抑制されていた。呼吸数のモニタリングの結果、rMV-Ed-HA 接種個体では頻呼吸が抑制された。また、胸部レントゲン撮影による観察を行った結果、rMV-Ed-HA 接種個体では肺炎は軽度に抑えられていた。攻撃感染後、経時的に鼻腔および気道の拭い液を採取して HPAIV RNA の有無を検討した結果、rMV-Ed-HA 接種個体ではウイルス排出期間が短縮されていると判った。さらに、インフルエンザ感染後の重症化との相関が知られているインターロイキン6の産生量を調べた結果、ワクチン個体では、攻撃感染後に一過的に増加した血中のインターロイキン6量が速やかに低下する傾向が見られた。攻撃感染の8日後に感染個体を剖検し、呼吸器の病理組織学的解析およびウイルス RNA の定量を行った結果、rMV-Ed-HA 接種個体では、炎症範囲が狭く、またウイルス RNA 量が少ない傾向があった。HPAIV 攻撃感染後のサルの血中における抗 HA 抗体価を ELISA 法により測定した結果、rMV-Ed-HA で免疫した個体では攻撃感染の 4 日後または 5 日後に抗体価が上昇したが、インフルエンザ症状からの回復は抗体産生よりも早かった。以上の結果から、rMV-Ed-HA は HPAIV 感染後の発症防御に有効であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成 26 年度の研究計画は大きく、(1) 高病原性鳥インフルエンザウイルス (HPAIV) 抗原タンパク質発現組換え麻疹ウイルス (rMV-Ed-HA) の HPAIV 防御効果について、以前に我々が確立したサルの HPAIV 感染モデルを利用して評価すること、および (2) rMV-Ed-HA 接種個体における HPAIV 感染に対する防御機構の解析、の二つに分けられる。前半については今年度でほぼ終了し、rMV-Ed-HA が HPAIV 感染後の発症防御に寄与することを示唆する結果を得た。後半については、細胞性免疫の寄与が示唆されたことから、来年度により詳細な解析を行う予定である。また、来年度に予定していた研究計画についても既に着手しており、予備的な結果を得ている。したがって、本研究計画は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 27 年度は当初の研究計画にしたがって、(1) MV ワクチン接種経験のある個体における本組換えウイルスのワクチン効果の検討、および(2) MV 野外株を用いた HPAIV 抗原発現組換えウイルスの作出およびそのワクチン効果の検討を行う。また、平成 26 年度に引続き、本組換え MV ワクチンによる HPAIV 防御効果の発揮機構についての解析を進める。
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Causes of Carryover |
諸経費を合算した結果生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にそのまま持ち越して使用する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Macaque models of highly pathogenic avian influenza virus infection using a wild water bird-derived strain.2014
Author(s)
Tomoko Fujiyuki, Misako Yoneda, Fumihiko Yasui, Takeshi Kuraishi, Shosaku Hattori, Hyun-jeong Kwon, Keisuike Munekata, Yuri Kiso, Hiroshi Kida, Michinori Kohara, Chieko Kai.
Organizer
第14回東京大学生命科学シンポジウム
Place of Presentation
東京
Year and Date
2014-04-26