2015 Fiscal Year Research-status Report
レジリエンスと企業の生存戦略を考慮したサプライネットワークの構造解析と設計提案
Project/Area Number |
26870151
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鬼頭 朋見 筑波大学, システム情報系, 助教 (50636107)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サプライネットワーク / レジリエンス / 企業戦略 / 産業構造 / 時系列データ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、実世界のサプライネットワーク構造を、全体のレジリエンスや効率性の観点と個々の企業の生存性の観点の両方から解析し、それらを両立し得る構造の設計提案の実現を目指すものである。 初年度に大規模な時系列データの収集・整理を無事に終え、さらに予定していた以上の新たなデータ収集もおこなうことができた。2年目であった当該年度は、そのデータを用い、様々な解析を遂行した。データの特徴を深く知るにつれ、当初予定していた手法は最適ではなく、他の手法を用いる必要性を認識したが、新たな解析アプローチを複数試行し、それぞれにおいて有意な結果を導くことができた。より具体的には、企業間の取引関係が、取引される製品の特徴(標準化のレベル、製造に要する設備など)を含む様々な要因の影響を反映し多様な構造を創発し得ることを示し、かつ時間経過とともにどのような構造に遷移していくのかを定量的に解析した。またそのシステム論的考察や、さらに企業が資源制約の下でどのような製品同士を組み合わせてポートフォリオを構築しているかについての分析もおこなった。また、これまでの研究成果を元に、サプライネットワークを一般化・モデル化する際に必要となる概念や用語の定義などを網羅的に調査・概観し、今後の当該分野研究の発展の基盤形成にも貢献した。 当該年度の成果を元に、すでに学術論文および国際会議論文・発表を何件か公表済であり、また幾つか投稿中・準備中の論文がある。 よって、研究は概ね順調に進行していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおりの解析は不適切であるという認識に至ったものの、それに替わるアプローチの候補を複数特定し、かつそれらを実装することができた。それぞれの解析を通して様々な側面から同じデータを分析・理解することが可能となり、学術論文や国際会議発表といった成果を複数創出することができた。 さらに、最終年度におこなう予定であるシミュレーションおよびサプライネットワークの設計提案について、十分な足がかりとなる基盤を創ることが出来た。一方で、設計提案に入る前により深い実データ解析をする必要性も感じており、全体としておおむね順調ではあるが、最終年度は想定よりも多くの課題に取り組まなくてはいけないであろうとの覚悟を新たにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、2年目の解析結果を踏まえて、実世界のサプライネットワーク設計および企業の戦略立案につながる提案をおこなうことを目標としている。2年目の解析をさらに深化させる必要性も感じているため、今後は解析・シミュレーションの設計と遂行・戦略や設計への提案の導出、という複数の困難な課題に取り組む必要がある。よって、当初予定していた以上のペースで研究を進める必要がある。 幸い、2年目におこなった解析のためのプログラム作成の段階で、最終年度のシミュレーションを見据えた柔軟性の高い設計を心掛けたため、シミュレータ自体は予定よりも比較的容易に作成できると考えている。非常に独自性の高い実データを用いている強みを最大限に生かし、既存研究によく見られる非現実的な過程を極力排除したシミュレーションの実現に尽力する所存である。
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Causes of Carryover |
当該年度は当初の予定よりやや多い支出となったが、初年度から当該年度への繰越し金額が大きかったために、この次年度使用額が生じた。当該年度は想定を上回る成果が出たことと、その成果を複数の異なる学術分野で公表したため、国際会議参加に係る出張旅費が多くなった。一方で、解析に必要なツールの多くは学会活動を通して得た人的ネットワークや海外共同研究先から無償提供を得ることができ、支出を削減できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度はシミュレーション開発を予定しているため、データ入力やデータベース整理の外注や学生バイトの雇用の可能性がある。また、学術論文と国際会議での成果公表は複数の学術分野にまたがるため、幾つかの会議・論文への参加・投稿が必須となる。発生した次年度使用額を有効活用し、より広い分野で成果公表をおこない、それを通じて新たな国際共同関係を獲得することで、本研究課題の終了後にもさらに研究を発展させられる土台を作りたい。
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Research Products
(13 results)