2016 Fiscal Year Research-status Report
「都市計画」概念の複数の起源とその影響関係に関する研究
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26870152
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
松田 達 武蔵野大学, 工学部, 講師 (80624759)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 都市計画史 / ル・コルビュジエ / イルデフォンソ・セルダ / ユルバニスム / 近代都市 / ヴェルナー・ヘーゲマン / 田園都市運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、欧米主要各国及び日本において「都市計画」の概念がどのように成立し発展してきたのか、それぞれの起源とその影響関係を明らかにしようとするものである。 平成28年度は、研究全体のまとめに取り掛かるため、これまで調査が及んでいなかった点について、文献調査及び現地調査を行った。具体的には第一に、アメリカにおける都市計画の起源についての文献を幅広く読み込んだ。特にダニエル・バーナム、ジョン・ノレン、フレデリック・ロウ・オルムステッド・ジュニアらの活動と都市計画の発展過程との関係を追った。第二に、ヨーロッパとアメリカを何度も往復したドイツ人都市計画家、建築批評家であるヴェルナー・ヘーゲマンに関する資料を読み込み、アメリカとの関係、ル・コルビュジエに与えた影響について調査した。第三に日本において、明治以降、市区改正条例から旧都市計画法成立に至る過程について、大蔵大輔、外務卿、外務大臣を歴任した井上馨の果たした役割、ヴィルヘルム・ベックマンらドイツからのお雇い外国人による影響などについて、国際的な視点から検討を加えた。第四に、平成29年2月から3月にかけて、アメリカ(シカゴ、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンDC、シアトル)での現地調査を実施し、シカゴ大学図書館、シカゴ歴史博物館、MIT建築・計画学部図書館、ハーバード大学GSD図書館、コロンビア大学建築学部図書館、アメリカ国立公文書記録管理局、シアトル公共図書館や現地の専門書店等での文献調査、また各都市の現地調査などを行った。 全体的に、当初の予測以上に十分な文献資料が集まり、必ずしも関係が明確ではなかった各国それぞれの情報のあいだの様々な関係の糸が明らかになってきた。これらの情報を整理し、まとめていくことを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、さらなる資料収集を続けるとともに、研究全体のまとめの作業に取り掛かりはじめた。現地調査では、シカゴ、ボストン、ニューヨークなどアメリカの多くの都市を回ることができ、各大学の図書館や専門書店等にて、調査をすすめることができた。これで当初予定していたすべての都市での調査をカバーできた。新設学部であるための学務の負担増加などにより海外出張が遅れ、一年の補助事業期間延長をしているが、一方で当初考えていた以上に有用な関連文献が見つかり、結果、実りある研究成果が集まりつつあり、延長したこと以上の成果が得られている。したがって、総合的に判断して研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成29年度は、研究全体のアウトプットを加速化する。文献資料は十分に収集できており、またその読み込みと分析も進んでいる。「都市計画」概念創成期における関連年表や相互関係の図表などの作成も進め、研究成果の社会への還元していく。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、所属学部が新設であることによる学務の急増より、海外出張の日程が遅れて補助事業期間延長を行うこととなった。そのため平成28年度に使用する額を、平成29年度に持ち越して使用することとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は決して多くないが、図書資料の購入費と研究のまとめ、アウトプットのための費用に当てる予定である。
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