2014 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ理念とその政治的・社会的反響――ロマン主義、欧州統合、レイシズム
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26870160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 大右 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30600225)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ポール・ベニシュー / ライシテ / リュック・ボルタンスキー / 欧州統合 / J. G. A. ポーコック / フレデリック・ロルドン / 欧州憲法条約 / スピノザ |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀後半から19世紀前半にかけてのフランス語文献を渉猟した。とりわけ中心的に検討した著者は、シャトーブリアン、スタンダール、ジョゼフ・ド・メーストルである。 共訳書、ポール・ベニシュー『作家の聖別』を刊行した。解説として執筆した「ポール・ベニシューとその時代(一)」では、今日のフランス文学研究における必読の基礎文献であるのみならず、近代ヨーロッパの政治・社会思想史研究への重大な貢献としても読まれてきた著者のロマン主義論の射程の広さを強調するとともに、近年日本でも注目を集めつつある「ライシテ」をめぐる一般的な議論との関係でそのアクチュアルな意義を析出し、さらにはきわめて興味深いその生涯を跡づけることで、20世紀前半のヨーロッパの精神史的風土の一端を、当時のロマン主義受容のあり方に着目しつつ解明することができた。 「批判の新たな試みと労働編成の行方――ボルタンスキー&シャペロ『資本主義の新たな精神』とその周辺」を発表した(共著書『近代世界システムと新自由主義グローバリズム』)。資本主義批判の一類型として「芸術家的批判」を定義し、ボードレールに典型像を見出しうるボヘミアン的芸術家の言説に注目する本書は、ロマン主義以降の芸術運動と現代社会の関係を理解するための恰好の道具立てを提供してくれる。 「ヨーロッパ理念の歴史と統合欧州の窮状」を発表した(共著書『「ヨーロッパ」とその他者』)。近世思想史の大家ポーコックによる「ヨーロッパの脱構築」を欧州統合プロセスへの彼の鋭い批判との関係で読み解く一方で、スピノザ哲学の社会科学への適用を企図する現代フランスの特異な経済学者フレデリック・ロルドンによるEU批判と「ヨーロッパ理念」への懐疑が持つ意義を、2005年の欧州憲法条約否決前後の状況を踏まえつつ明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ベニシューのロマン主義四部作第一弾に当たる『作家の聖別』に付した「ポール・ベニシューとその時代(一)」は、2016年度刊行を目指して準備中の第二弾『預言者の時代』に続編を掲載予定であるが、すでにこの「(一)」において、ベニシューを参照点とすることで開かれる研究上の視野の広がりについては十分に示唆することができたとともに、以後の展開についても、複数の企画が多少とも具体的に動き出している。 ボルタンスキーとシャペロによる大著『資本主義の新たな精神』の議論を、その背景を踏まえつつ精緻に読み解く作業を提出することにより、19世紀以降21世紀初頭の現在に至るまでのヨーロッパの政治的・社会的・文化的環境の変容を捉える包括的な見通しを得ることができた。 「ヨーロッパ理念の歴史と統合欧州の窮状」の執筆・公刊もまた、「啓蒙のヨーロッパ」を現出させた18世紀から制度的欧州建設の進む――そしてそれが様々な矛盾と困難を惹起しつつある――現在に至るまでに「ヨーロッパ理念」がたどった運命を跡づける貴重な機会となった。それ自体として充実した研究成果であるとともに、以後の様々な展開の土台として役立っていくはずである。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の研究成果は、予想以上に充実したものとなった。2015年度から2016年度にかけても、すでに複数の企画が進行中であり、いずれも本研究課題との関係で、実り多いものとなるはずである。これらの企画を着実に仕上げるべく務め、既定の研究計画を必要に応じ修正しながらより充実したものにしていきたい。
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Causes of Carryover |
年度末最後の請求時に若干の計算違いがあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入に利用する予定。
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Research Products
(3 results)