2015 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパ理念とその政治的・社会的反響――ロマン主義、欧州統合、レイシズム
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26870160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片岡 大右 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (30600225)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロマン主義 / 欧州統合 / 社会的なもの / シャトーブリアン / スタンダール / 加藤周一 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスおよび欧州統合の枠組み全体との関連において、新自由主義の展開とその背景をなす諸理論の検討を進めた。その成果は次年度およびそれ以降の発表を予定しているが、書評のかたちでいつくかの文献紹介を行った(ロベール・カステル『社会喪失の時代』、ハイナー・フラスベック&コスタス・ラパヴィツァス『ギリシア デフォルト宣言』、酒井隆史『暴力の哲学』)。 論文「表象の失調に注がれる眼差し――スタンダールと鏡の経験」を発表した〔森本淳生編『〈生表象〉の近代』所収)。ロマン主義時代のこの代表的作家にあって、古典主義的な表象作用が深い懐疑にさらされていたことを、鏡の形象の諸事例の検討を通して明らかにした。 論文「近代世界という荒野へ――シャトーブリアンと宗教」を発表した(宇野重規・伊達聖伸・髙山裕二編『共和国か宗教か、それとも』所収)。ロマン主義時代を代表するこの作家・政治家の全体像の描出に努めた。 "Chateaubriand, disciple infidele de Pascal"を発表した(『Revue d'histoire litteraire de la France』誌)。シャトーブリアンのパスカル受容を通して、近代の文学的感性の発生を見定めた。 「ロマン主義的風土の探究と日本的近代の展望――1950年前後の加藤周一(上)」を発表した(『慶應義塾大学日吉紀要』)。戦後日本を代表するこの知識人のフランス文学観の変化に注目し、近代とロマン主義の関係を、さらには日本的近代の問題を考察した。 口頭発表「ポール・ベニシュー、シャトーブリアン、加藤周一――フランス・ロマン主義と「宗教的なもの」」を行った。フランスを中心とするヨーロッパ・ロマン主義の問題を、研究史と日本におけるその受容を考慮に入れつつ考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度内には実現しえなかったものの、ヨーロッパの新自由主義をめぐっては、次年度ないしそれ以後の公刊に向けての具体的な計画が進んでいる。ロマン主義研究の分野では、複数の論考を発表する機会を得た。とりわけ、加藤周一研究の開始によって、ヨーロッパをめぐる諸問題の日本における反響を主題化することができたのは、本研究にとって非常に重要な展開だといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果も、大いに実りあるものとなった。次年度以降も、予定されている様々な企画を順調に遂行し、新たな課題をも掘り起こしていきたい。
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Causes of Carryover |
年度末最後の利用に若干の計算違いがあったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入に使用する予定。
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Research Products
(5 results)