2015 Fiscal Year Research-status Report
気候変動適応型社会の形成に向けたランドスケープ計画論
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26870164
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯田 晶子 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90700930)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 島嶼 / 土地利用 / ランドスケープ / 気候変動 / 災害リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ミクロネシア島嶼パラオ共和国を対象として、気候変動適応型社会の形成に向けたランドスケープ計画の手法とその論点を導くことを目的とする。具体的には、自然生態系が有する防災・減災効果を地域の空間計画・デザインに活用するために、土地の災害リスクの評価、および土地利用変化と災害リスクの関係性分析を踏まえ、空間計画・デザインへの応用手法の検討を行う。 本年度は、昨年度までに作成した過去約100年の土地利用データを元に、土地利用の変化と災害リスクの関係性分析を行った。その結果、沿岸部の湿地や砂地における宅地開発や、内陸部の傾斜地でのインフラ開発と宅地開発により、特に浸水リスクと土砂災害リスクが高まっている地域を特定することができた。また、そのような地域では、沿岸部や急傾斜への建築規制や開発規制など建築・土地利用のゾーニングが存在せず、適切な規制がなされていないことも明らかとなった。今後、海水面上昇や降水パターンの変化など島嶼地域において気候変動の影響が増大していく可能性を鑑みると、土地利用や建築に関する各種規制を整備することで、自然生態系を保全し、災害リスクの高い地域における開発を抑制していくことが不可欠であると言える。 加えて、本年度は、主要なカウンターパートであるパラオ共和国の財務省気候変動局(Office of Climate Change, Ministry of Finance)の担当者らとの研究打ち合わせを元に、新たに街路の暑熱環境に対してサーモグラフィを用いた試験的な評価を実施し、街路の暑熱環境と歩行快適性の観点から問題のある地区の特定を行った。そして、その評価結果を元に、街路周辺の土地利用と街路そのもののデザインの改善案を提示し、実現に向けた道筋を話し合った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、本年度は土地利用の変化と災害リスクの関係性分析を行った。また、本年度は、カウンターパートの研究打ち合わせを踏まえ、海水面上昇や高潮による浸水や豪雨による土砂災害リスクに加え、暑熱環境の評価を行った。当該地域においては、街路の暑熱環境を改善し、歩行快適性を確保することは、車社会からの脱却とそれによる温室効果ガスの削減という重要な政策課題の一つとなっており、実現に向けた基礎的知見が必要とされている。そこで、本研究では新たにこの観点を研究に組み入れ、実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究のカウンターパート(先述の気候変動局の他、自然資源環境観光省、パラオ流域協議会、環境NGOのパラオ・コンサベーション・ソサイエティなど)の協力を得て、パラオの将来の土地利用シナリオを複数案作成し、シナリオ毎に災害リスクの評価を実施し、気候変動への適応策の観点から比較検討する。また、街路の暑熱環境と歩行快適性については、気候変動局の協力を得て、当該地域の学生とデザイン・ワークショップを開催し、具体的な改善策の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
現地調査を兼ねた研究打ち合わせをパラオ共和国で2度実施する予定であったが、現地カウンターパートが来日した関係で、うち1度は日本において打ち合わせを行うことができた。その代わり、次年度は将来の土地利用シナリオの作成と街路空間の改善案についてのワークショップの開催、およびその準備のために現地調査に頻繁にいく必要があるため、その費用にあてる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地カウンターパートと共同でのワークショップの開催、およびその準備少なくとも年に2回パラオ共和国に訪問する。なお、ワークショップは当初予定していたよりも参加人数が多くなる見込みであり、次年度使用額分約30万円は、調査協力者のための旅費(15万円×2名)として使用する予定である。
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