2015 Fiscal Year Research-status Report
近代日本音楽史のメディア論的変容に関する社会史的研究―「未熟さ」の視点から
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26870168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
周東 美材 東京大学, 大学院情報学環, 特任助教 (80725226)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会学 / 芸術諸学 / メディア / 子ども / 日本社会 / ポピュラー音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本社会における音楽の大衆化の問題に関して、「未熟さ」という視点を導入することで社会史的に明らかにし、メディア技術と西洋音楽の社会的受容についての総合的・包括的な理解を目指すものである。日本社会で流行している「かわいさ」をめぐるメディア文化は、産業的流行、公的性格、文化ジャンルの影響の越境性、ナショナルな記号性という諸特性を有している。こうした文化は、メディア技術・環境の近代化と音楽の大衆化をめぐる100年の歴史を繙くなかで理解されるべき問題である。社会史の記述にあたっては、20世紀初頭から現代に至るまでの主要なメディア環境の変化に注目し、第I期:レコード・ラジオの普及(1910年代~20年代)、第II期:米軍基地の展開からテレビ放送の開始(1945年代~50年代初頭)、第III期:テレビ全盛期(1970年代)、第IV期インターネット時代(2000年代~10年頃)の4期に分け、それぞれの時代区分におけるメディア環境の社会的変容と新しい音楽文化の形成の関係を解明する。具体的な研究成果は下記の通り。 1.第I期に関する歴史的研究の総決算として単著『童謡の近代――メディアの変容と子ども文化』を刊行した。また、日本音楽学会全国大会にて「童謡と1920年代のメディア変容:「読む」ことと「歌う」ことのあいだをめぐって」の発表を行った。 2.第III期に関する一次資料の調査を踏まえ、論文「子ども文化としての「スター誕生!」――1970年代のテレビと阿久悠の試み」、小論「音楽文化としての甲子園――「未熟さ」のパフォーマンス」の2点を発表した。 3.第II期に関する調査研究として松竹歌劇団、日活、および水の江瀧子に関する資料収集を行った。 4.理論枠組みについて遠藤薫氏(学習院大学教授)と詳細な検討を行い、2016年4月に共著『カワイイ文化とテクノロジーの隠れた関係』が刊行される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実績計画では、書籍および論文の発表は予定していなかったが、これらを発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究計画を継続して推進していく。
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Causes of Carryover |
当初、購入予定だった資料(古書)が在庫不在となり、購入できなくなってしまったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の助成金と合算し、同一資料を別の古書店で購入する。
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