2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870178
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岩坂 将充 同志社大学, 高等研究教育機構, 准教授 (80725341)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トルコ / 司法 / 政治 / 民主化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2000年代のトルコの「民主化」進展における司法機関(とりわけ憲法裁判所)の重大な方向転換、つまり軍の影響下から脱し逆に「民主化」に寄与するにいたった変化の背景となる、人事や裁判官任命権の変遷について重点的に分析を行った。本年度は国内での分析に加え、トルコ(8月・2月)およびイギリス(8月)での資料調査・収集、ならびに数件のインタヴューを実施した。また、学会発表においては、その時点での成果発表を行うとともに、参加者からの指摘を参考にしつつ適宜研究の微調整を行った。これらを通して明らかにした点のうち、特筆すべきものは以下のとおりである。 1、1980年クーデタ後の軍事政府は、憲法裁判所裁判官の任命に直接かつ具体的に介入するなど、当初より司法機関の人事に重大な関心を有していた。とりわけその際に任命された裁判官のうち1名が、のちに憲法裁判所長官に就任したことは注目に値する。 2、憲法裁判所による違憲審査の棄却・却下件数が、以降大幅に増加した。これは、憲法裁判所が政府の「民主化」を含む諸政策に否定的ではないということを示すものであり、本研究がとりあげる憲法裁判所の方向転換の根拠ともなるものである。 3、近年の司法改革のなかで、司法機関の人事を担う裁判官・検察官高等委員会(HSYK)に関するものは2010年・2014年と二度実施されたが、後者による組織改革後、同委員会委員は政府の影響をより受けやすくなった。 これらは、トルコの文脈においてだけではなく、民主化に関する研究においても従来あまり指摘されてこなかった点であり、本年度の分析によって明らかにした意味は大きいといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の達成に向けて、制度的な面からの事実関係の確認や整理、ならびに基本的な資料調査・収集は行うことができた。また、目的達成に不可欠な、理論面の整理や人脈の拡大はおおむね順調に実施したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
より幅広いアンケート調査およびインタヴューの実施を実現する。そのために、現地トルコの研究者・研究機関・調査機関との連携強化に努めると同時に、法学的な視点を取り入れるために当該分野の専門家とも議論を深める。
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Causes of Carryover |
研究者・専門家等へのインタヴューを実施したが、発生予定であった人件費・謝金の支出が抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は各分野の研究者・専門家・専門機関により多く協力をあおぐ予定であるため、ここでの金額をあわせて使用する計画である。
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