2014 Fiscal Year Research-status Report
黒川能の音楽技法に見られる五流との影響関係に関する研究
Project/Area Number |
26870182
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
柴田 真希 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 研究員 (60721214)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 民俗芸能 / 伝承 / 能 / 謡曲 / 音楽学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、黒川能の謡の音楽技法の成立過程を、五流からの影響という観点から検証し、歴史的に明らかにするものである。これまでに研究代表者が調査を行ってきた黒川能の現行の音楽技法に関する情報を元に、過去の黒川能の音楽技法の特徴を推測する。さらに、これまでに国文学の研究者等を中心に明らかにされてきた黒川能と五流の接触の様子も考慮に入れて、黒川能の謡の音楽技法が成立してきた、いわば黒川能の「音楽の歴史」の解明を行う。
初年度にあたる当該年度は、2014年10月に黒川能の伝承地である山形県鶴岡市黒川において調査を実施した。この調査では、今後の調査計画を先方に伝え、調査の方法や日程などについて調整を行った。本研究においては、黒川現地に現在も残されている、これまで実施された調査でも未調査の謡本や伝書の状況を把握することが重要となるため、10月の現地調査を通じて今後の見通しを立てることができた。
研究成果の一部として、口頭発表を6、8、11月の3度行った。6月には、日本アートマネジメント学会、文化資源学会合同支部会において、8月には、The 4th international symposium of the ICTM study group on MEAにおいて、黒川能の伝承者たちが「保存」という行為をどのように捉えているのかということについて口頭発表を行った。「保存」に関する伝承者の意識は黒川能の音楽技法の変容に大きな影響を与えているものと考えられる。両学会共に、これまでに発表を行ったことがない学会であり、他分野の研究者も含めた新しい観点からのコメントを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にしたがって、現行の黒川能の音楽技法の分析を進めるのと並行して、次年度以降実施する現地での調査計画を先方と調整し、予備調査を実施した。 また、研究成果の発表も積極的に行い、異分野の研究者からのフィードバックも得られた。 さらに、京都市立芸術大学の藤田隆則教授の研究会にも参加し、能の音楽を演出の進化という観点から、音楽のみならず国文学など異分野の研究者と共に考察を行った。本研究会への参加を通して、本研究の分析の主眼である黒川能の音楽の変化を、五流の音楽の変化と比較する観点を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に引き続き、現行の黒川能の音楽技法についてより詳細な実態を把握するための分析を行う。 さらに、調査先と調整を行った調査方法や日程に基づき、現地において個人所蔵の資料を収集し、分析を行なう。同時に、個人に聞き取り調査も実施し、該当資料の歴史的経緯についてできる限りの情報を収集したい。また、初年度は着手することができなかった東京文化財研究所、法政大学能楽研究所に所蔵されている、昭和60年代に能楽研究者の横道萬里雄や表章等によって集中的に収集された資料についても調査を実施し、謡本や伝書について分析を行う。 なお、今年度はこれまで明らかになった現行の黒川能の音楽技法について発表を行い、コメントを得たい。
|
Causes of Carryover |
初年度は調査地での謝礼が当初の計画とは異なり発生しなかったため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、調査地での現地調査が主になってくるので、謝礼が当初計画より多く発生する可能性があり、その謝礼代に使用したいと考えている。
|
Research Products
(3 results)