2019 Fiscal Year Research-status Report
黒川能の音楽技法に見られる五流との影響関係に関する研究
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26870182
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
柴田 真希 東京藝術大学, 大学院音楽研究科, 研究員 (60721214)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 黒川能 / 民俗芸能 / 謡 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで謡本、伝書の所蔵調査・網羅的収集を課題として、黒川現地での調査を行なってきたが、調査の過程で、謡本や伝書の多くが未だ個人の所蔵であり、数も膨大であることが明らかになった。そこで、黒川能の師匠を務めている方の自宅に所蔵されてきた謡本を対象とすることを決め、資料の提供を受けた。その中から、これまで黒川能について明らかになっている史実と照らし合わせた際に、黒川能の所演となった理由が明らかである曲、あるいは、観世流や宝生流といった流儀で歌われている謡と比較した際に、その詞章に明らかな異同が認められる曲を選定し、謡本の解読作業と撮影を進めた。 謡本の解読作業は、五流の謡との詞章の違いに着目しながら作業を進めている。謡のどの部分の詞章が、どのように異なるのかということを明らかにすることで、黒川にその曲が取り込まれた時期を推定することを目的としている。 また、2月1日から2日には、現地で行われる「王祇祭」の調査を行った。王祇祭の調査では、上座の「花月」や下座の「高砂」「鐘巻」などを見学し、録画を行った。さらに、現地の伝承者への聞き取りを行い、現況の把握に努めた。黒川では、伝承者数の減少、高齢化の進行等により、芸能の伝承、祭礼行事の伝承の両側面において、従来の伝承の形態からの変容が見られ始めていることが明らかになった。研究課題と同時に、今後も継続して現地での継承活動の変化を追っていく必要性を感じている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
謡の分析作業が、当初の予定より遅延している。資料の提供に時間を要したことと、その選定に時間を要したことが背景にある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度を行ってきた謡の分析作業について、さらにスピード感をあげて取り組みたい。現在の演じ手たちからの聞き取りも参考にしながら、五流との異同点について、より具体的にその諸相を明らかにしたいと考えている。同時に、様々な曲が黒川で所演されることに至った経緯についても、それらを明らかにする資料の存在について、引き続き調査を進めたい。
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Causes of Carryover |
現地での調査を該当年度内に2回行う予定であったが、調整がつかずに行くことができなかったため、旅費の支出が結果的に当初予定額より少額となった。今年度は最終年度ということもあり、現地での調査を2回は実施したいと考えている。
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