2014 Fiscal Year Research-status Report
化学量論比を制御したFe3O4ヘテロ界面の機能探索
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26870188
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松崎 功佑 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 特任助教 (40571500)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マグネタイト / 微細構造観察 / 後熱処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
マグネタイト(Fe3O4)は、キュリー温度が858Kと高くまた第一原理計算により室温においてもフェルミ準位近傍で一方向のスピン状態密度から成るスピン偏極率が100%のハーフメタルと予想され、古くからトンネル磁気抵抗素子(MTJ)などのスピン注入電極への応用が期待されてきた。しかしながら従来の薄膜作製方法では高スピン偏極率を有するFe3O4ヘテロ界面は得られておらず、その原因もはっきりしていない。 本課題ではMTJ素子による高スピン偏極率界面の実現に必要な高品質なFe3O4(111)単結晶薄膜を作製に注力し、価数・化学両論比を厳密に制御可能な高温CO/CO2雰囲気下でas-grown薄膜の後熱処理を施すことで、薄膜の形態で初めてFe3O4固有の磁化・磁気輸送特性が得られることが分かった。原子レベルの微細構造観察により界面近傍を含む薄膜全体の価数制御に効果的であること、また薄膜の形態で磁気輸送特性が単結晶バルクと一致することを見出した。さらにPLDで作製されたas-grown薄膜では界面近傍の化学量論比の制御が困難であり、従来Fe3O4薄膜固有の反強磁性的な構造欠陥に起因するとされた磁気輸送特性の劣化が、膜中に混在するFeOx反強磁性相によって生じていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デバイス応用に必須であるマグネタイト薄膜の高品質化はおおむね順調に進んでおり、MTJ素子などへのデバイス作製に注力できる段階に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
微細構造観察によりこれまで問題とされていなかった化学量論比の制御が重要であることが分かった。従来の薄膜作製プロセスだけでは、価数のずれや多数の構造欠陥が生じ、特に磁気輸送特性の劣化の原因となり、高温後熱処理により構造欠陥の低減化に有効であることが明らかになった。この薄膜の高温後熱処理プロセスを、従来の薄膜作製法だけでは高品質化が不可能な材料についても応用する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度納入予定だった熱処理装置を次年度に購入するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に熱処理装置の購入。
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