2015 Fiscal Year Research-status Report
日本語における二種類の依存関係の構築処理の相互作用に関する心理言語学的研究
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26870219
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安永 大地 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (00707979)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 文処理 / 心理言語学 / 依存関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の文処理研究において、しばしば話題にあがるキーワードとして、「依存関係」がある。依存関係とは、「ある要素Xと文中で共起する必要がある要素Yとの間に成立する関係」と定義する。そして、これら2つの要素間での依存関係が成立した場合に文の処理が正しく行われたと仮定し、なるべく早く依存関係の構築を済ませようとするのが人間の文処理システムの性質であると考えられてきた。これは英語に代表される主要部前置型言語に限らず、日本語のような主要部後置型言語の処理においても観察される性質である。 本研究課題では、項と述語の関係以外に、隣接しない要素間で成立すべき依存関係が1つの文に2つ含まれる場合の文処理に着目し、それら2つの依存関係の成立に関する処理の優先関係がどのようになっているかを明らかにすることが主目的である。2年度目は、関係節における空所と埋語の関係について、従前の研究での主張が正しくない場合があるということを質問紙調査、読み時間計測実験により明らかにした。これらの成果は、Yasunaga (2016)として論文を刊行した。また、さらに否定呼応の表現(まったく~ない)を用いた依存関係の構築がどのような手続きで行われるかを検討した論文を村岡・安永 (2016)としてまとめた。本年度の成果は、従来の研究において、あまり重視されていなかった「時間軸」と「後続可能性」という2つの観点から、文処理を見直すと、従前の研究での考察に不備があることが指摘でき、さらに、その観点を重視した実験を行なうことで、新たな文処理モデルを構築するきっかけを与えることができたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、関係節における空所と埋語の依存関係および否定呼応副詞と否定辞の依存関係についてそれぞれ個別にどのような処理の特質があるかを明らかにすることができ、それぞれについて論文を刊行することができたので順調であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画書の時点では、関係節に含まれる依存関係を研究の対象とすることが考えていなかったが、関係節を用いた実験での成果が大きかったため、これを用いて依存関係の相互作用について検討することとした。また、否定呼応表現についても同様である。今後これら2つの依存関係についてその相互作用を検討するための実験の予備調査、準備はすでに完了しているため、着実に遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
備品調達にかかる費用が当初の計画よりも安価で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験を繰り返すことで必要となる消耗備品があるので、そのための費用に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)