2014 Fiscal Year Research-status Report
カリウムチャネルにおけるイオン選択性と透過機構を統一的に記述する理論の開発
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26870232
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
炭竈 享司 福井大学, 医学部, 特命助教 (30579412)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオンチャネル / 分子動力学 / シミュレーション / イオン透過 / イオン選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオンチャネルにおけるイオンの選択的透過は、イオンチャネルの機能の根幹であり、細胞が機能するための活動電位や膜電位の生成の微視的起源である。イオンチャネルがどのようにイオンを選択しつつ透過させているのかは、イオンチャネルの発見以来、X線結晶解析が行われ詳細な原子構造が分かった現在でも解かれていない問題である。本課題は、原子レベルでのコンピュータシミュレーション(分子動力学法に基づく)を行い、この問題に対する答えを探るものである。 イオンチャネルとして、構造の良く知られているK+チャネル(Kv1.2チャネル)を採用した。これは、K+選択的なチャネルであり、Na+を通しにくいことが知られている。電気生理学的手法による電流計測ではK+チャネルを通るNa+電流を観測できないため、時に「Na+は透過しない」と勘違いされていることもある。しかし、これは観測するにはNa+電流が小さ過ぎると考えるのが科学的であろう。つまり、選択性の問題は、本当はイオン透過の問題のはずである。この考えを基に、K+チャネルを通るNa+電流のシミュレーションを行った(K+電流については、既に解析を行い、現在論文として投稿中である)。 計算されたNa+電流は0.8 pAであった。この電流値は、電気生理学的手法による観測の下限程度であり十分に小さく、計算されたK+電流の1/20であった(K+電流は実測値とほぼ同じである)。古典的パラメータを用いた計算であることを考慮すれば、実験を十分に再現するデータが得られたと考えている。また、Na+の透過機構は、K+のそれと同様であることが明らかになった。透過はイオンの細胞内溶液から中心空洞、中心空洞から選択性フィルタへの侵入という2段階によっており、また後者の過程においていわゆるノックオン機構が起きることも確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Na+の選択的透過について、論文として纏まっていないことを考えれば、「計画以上」に推進しているとは判断できない。一方、Na+の透過の仕方まで解明できたことを考えれば、「遅れている」とも判断できないと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
Na+の透過様式がK+のそれとほぼ同じであること、また、Na+の透過の方が(当然ながら)遅いことも明らかになった。この透過速度の違いが何に起因しているのかを、それこそがイオン選択性の起源の解明のための鍵であると感じており、今後追求して行きたい。
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Causes of Carryover |
海外での発表を予定していたが、取り止めたため残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額は50万円程度であるため、ハードディスクなどの追加購入費用に充てようと考えている。
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