2014 Fiscal Year Research-status Report
高分解顕微鏡観察を主としたカリウムチャネルKcsAの柔軟な構造と機能の相関解明
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26870233
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
角野 歩 福井大学, 医学部, 特別研究員 (80717140)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カリウムチャネル / KcsA / 原子間力顕微鏡 / 電子線トモグラフィー / 構造変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
pH依存性カリウムチャネルであるKcsAは、酸性条件下でイオンの通り道を開く。KcsAの構造は、大きく分けて膜貫通ドメインと細胞質ドメインに分けられる。開閉各状態における膜貫通領域の構造は結晶構造により明らかになっているが、細胞質ドメインの構造は未だ不明である。本研究では、水中・非結晶化状態におけるKcsAチャネルの細胞質ドメインの構造、および細胞質ドメインの構造変化がチャネル機能に及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。 平成26年度は、細胞質ドメインが水中で特定の硬い構造をとっているのか、それとも柔軟に揺らいでいるのかを原子間力顕微鏡(AFM)観察により検討した。脂質膜に再構成したKcsAチャネルを雲母基板上に組織化し、開閉各状態をとるpH条件下でAFM観察した。膜表面から数nm突出した細胞質ドメインらしき構造が観察されたが、得られた構造は不鮮明な粒状であり、一分子毎の鮮明な構造は観察されなかった。ここで用いた一般的なAFM観察では、一枚の画像の取得に10分程度要しており、構造揺らぎに対して走査速度が遅すぎて構造が平均化されたために、不鮮明な粒状の構造として観察されたのだと考えられた。さらに構造が揺らいでいるのかどうか確認するため、10 frame/secの走査速度で高速AFM観察を行った。すると、高速に揺らぐ細胞質ドメインと思われる構造が観察された。このことより、水中においてはKcsAチャネルの細胞質ドメインは高速に揺らいでおり、KcsAの細胞質ドメインは水中において硬い特定の構造をとらないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高速AFMにより、水中においてはKcsAチャネルの細胞質ドメインは高速に揺らいでおり、KcsAの細胞質ドメインは水中において硬い特定の構造をとらないことが示唆されたため、研究はおおむね順調に進行していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
水中で特定の構造をとらないということは、瞬間凍結で構造の動きを止める低温電子顕微鏡観察が有力ということになる。今後は電子線トモグラフィー観察の試料調製条件の検討および情報収集に重点を置いて研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
共同研究先である沖縄科学技術大学院大学の電子顕微鏡のマシンタイムが不足していたため、当初の予定よりも試薬代、旅費等がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
共同研究先への旅費、生化学実験器具および試薬に使用する予定である。
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