2014 Fiscal Year Research-status Report
水電解と燃料電池を組み合わせた省エネ型トリチウム分離回収技術の研究
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26870234
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松島 永佳 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30578026)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 同位体分離 / 水素エネルギー / 燃料電池 / 水電解 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原子力発電所の汚染水問題では、トリチウムの分離・回収技術の確立が急務とされている。水素同位体分離法は色々と提案されており、中でも水電解法は分離係数が極めて高い利点が知られている。しかしその電力消費量は膨大であり、電解法のみによる分離方法では依然として多くの課題がある。そこで本研究では、水電解と燃料電池を組み合わせた新しい省エネ型分離方法を提案している。しかし、燃料電池での同位体分離の報告例はなく、水素同位体の酸化電極反応に関する基礎的知見も少ない。今年度は重水素電極反応に関する速度論的パラメーターと同位体効果の関係について調べた。 電気化学測定は、水素雰囲気下で白金回転ディスク電極を用いて行った。電解液は軽水素硫酸溶液(0.05 M H2SO4 + H2O)と重水素硫酸溶液(0.05 M D2SO4 + D2O)を使用した。測定は開回路電位(OCP)から± 300 mVの範囲、掃引速度± 10 mV s-1にてリニアスイープボルタメトリーを行い、軽水素または重水素の酸化反応(HOR or DOR)及び還元反応(HER or DER)による電流値を記録した。 ずれの溶液でも酸化反応では拡散限界電流が観察され、その値は回転数の1/2乗と比例関係を示した。平衡電位から±50 mV付近のターフェル勾配を解析すると、還元反応のターフェル勾配はHERの方が小さく、一方、酸化反応に関してはDORの方が小さかった。今回得られた結果から、重水素電極反応ではその酸化反応速度の方が速く、燃料電池でも水素同位体は重水として分離濃縮できる可能性が発見できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画では、アルカリ溶液を使った水電解や燃料電池反応における、水素同位体の速度論的考察を提案していた。今年度は当初の予定通り実験が順調に遂行し、水素同位体の酸化反応や還元反応に関わる交換電流密度やターフェル勾配を測定測定することに成功し、2件の学会発表ならび1件の学術論文への投稿ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、本研究で提案しているカスケードモデルの実証実験を行う。そこでは、以下の3点について検証する計画である。 a) 一段当たりの消費電力量と分離係数の評価 b) 複数段での消費電力量と分離係数の評価 c) パイロットプラント設計の知見を得る
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