2014 Fiscal Year Research-status Report
アニオン交換膜表面のイオン伝導パスの電流検出AFM測定に関する研究
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26870235
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
原 正則 山梨大学, 総合研究部, 助教 (40457825)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 原子間力顕微鏡 / アニオン交換膜 / アニオン伝導パス / in-situ測定 / 炭化水素系膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、実作動中のアニオン交換膜型燃料電池(AEMFC)を模擬した条件下における電解質膜表面のアニオン伝導挙動をin-situ測定法により解明し、AEMFCの実用化につながる電解質膜の開発指針を得ること目的としている。この研究のために、環境制御チャンバーを備えた電流検出原子間力顕微鏡(CS-AFM)を用い、燃料電池の作動条件を模擬した環境(温度:室温~60℃、供給ガス加湿度:40~100%RH)にて、AEMの表面構造と表面上のアニオン伝導パスを同時に測定し、様々な環境下におけるアニオン伝導パス分布の画像化を行った。さらに、電解質膜に本研究室で合成した分子構造の異なる四級化アミン電解質膜を用い、AEMの組成や膜の内部の相分離構造とアニオン伝導挙動の関係性の調査を行い、セル発電性能との関係について検討を行った。 CS-AFMを用いたAEMの測定においては、CO2を除去した精製空気中にてPt被覆したAFMチップを用いて電解質膜表面上で水酸化物イオンからの酸素発生反応を検出することでアニオン伝導パス分布を測定した。加湿条件によるアニオン伝導パス分布の変化の測定より、AEMは低加湿においてはアニオン伝導パスの面積及び検出される電流値が大きく減少し、プロトン交換膜に比べて加湿による影響が大きい事が分かった。さらに、分子構造の異なるAEMでの比較より、ブロック構造を有する電解質膜に比べてランダム構造を有する電解質膜ではアニオン伝導パスの面積が大きく、この面積の違いが触媒層と電解質膜間のイオン輸送挙動に影響することで、AEMFCのセル性能に影響を与えることが分かった。 今回得られた測定結果は、AEMのアニオン伝導挙動の解明だけでなく、AEMFCに用いる電解質膜の新規材料の開発のための指針となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画においては、CS-AFMを用いて様々な条件におけるAEM表面上のアニオン伝導パスを測定することにより、AEM中におけるアニオンの輸送挙動について解明することを目的としており、研究の一年目においては、(1) AEMのCS-AFM測定に用いるセルおよび環境制御チャンバーの作製および作動評価、(2) CS-AFMを用いたAEM表面上のアニオン伝導パス分布の観察、(3) 実作動中のAEMFCを模擬した条件下におけるアニオン伝導パス分布の反応挙動の解析を行うことを計画していた。 研究の達成状況として、(1)についてはCS-AFM測定に用いる環境制御チャンバーの改良および測定用試料サンプルの製作条件の最適化を行った。試料の最適化では、電解質膜として市販のAEMを、対極としてガス拡散電極を用いてCS-AFMおよび単セルでの作動評価を行い、ガス拡散電極の構成および電解質膜との接着条件を決定した。(2)については、セル作動条件下におけるCS-AFM測定に先立って、室温、高加湿(100% RH)の作動条件において、本研究室で合成した炭化水素系電解質膜の測定を行い、CS-AFM測定に適した印加電圧やAFMチップの押し付け圧力による電解質膜への影響を調査し、AEMのアニオン伝導パスの測定に適した測定条件を決定した。(3)については温度、湿度制御下において、AEM中のイオンチャンネルに影響する親水部クラスターサイズやイオン交換容量の異なるAEMのCS-AFM測定を行い、膜特性やセル発電特性への影響の比較を行った。この測定より、AEMの相分離構造が発電特性に大きな影響を与えることが明らかとなった。 このように、研究計画の一年目に予定していた測定については、ほぼ計画通りに遂行できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の一年目の計画においては、AEM用のCS-AFM測定環境および試料の作製条件の確立とCS-AFM測定条件の最適化を行い、分子構造の異なるAEMのCS-AFM測定より、発電条件(温度および湿度)やAEMの構造とアニオン伝導パスの分布およびセル発電性能との関係を調査した。本研究の二年目においては、(1) CS-AFM測定用のセルの改良、(2)アニオン伝導パス分布の経時変化測定と電解質膜の活性化および劣化機構の解明を行うことを計画している。 CS-AFM測定用のセルの改良では、一年度目の研究において得られた結果を基に、特に、二年度の主な研究課題となるアニオン伝導パス分布の経時変化測定を行うために必要とされる長時間の安定な測定が可能な熱ドリフトの少ない、長時間の安定作動するセルの作製を行う。アニオン伝導パス分布の経時変化測定と電解質膜の活性化および劣化機構の解明では、長期作動および作動条件変化によるAEMのアニオン伝導パス分布の経時変化の測定を行うことにより、セル作動時のコンディショニングや経時変化によるAEMの活性化および劣化による発電性能の変化と膜のアニオン伝導パス分布の変化との関係を明らかにする。さらに劣化過程におけるアニオン伝導パスの分布の変化について定量的な解析を行い、電解質膜の劣化機構の解明につなげる。また、一年目の研究課題であったAEMFCを模擬した条件下におけるアニオン伝導パス分布の反応挙動の解析についても、(3)一年目の成果を基に新規に合成を行った炭化水素系電解質膜を用いてCS-AFM測定による反応挙動の解析を行っていくことを計画している。 本研究で得られた研究成果については、国内外での学会発表、科学雑誌への論文投稿、および当センター主催の燃料電池ワークショップでの研究発表を通して報告を行う予定である。
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Research Products
(5 results)