2014 Fiscal Year Research-status Report
自由画教育運動を契機とした美術教育の地域的展開-石井鶴三関連資料の整理・分析
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26870238
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
大島 賢一 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (90645615)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 美術教育史 / 郷土教育史 / 長野県 / 石井鶴三 / 彫塑教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、資料整理、スキャニングに取り掛かりながら、石井鶴三の関連研究、刊行資料の収集整理を行った。 具体的には、1、石井鶴三の基礎的文献整理として『石井鶴三全集』、『石井鶴三書簡集』、上田彫塑研究会発行の資料集、信濃教育会発行『信濃教育』などの関連文献の収集・整理を行った。2、美術教育領域における石井鶴三研究について、先行する研究について整理、精読を行った。これらの調査の結果、石井鶴三の近代的美術教育における既存の位置付けについて、大正期から昭和初期にかけて手工教育として位置付けられていた粘土細工を、芸術教育としての彫塑教育へと転換させる萌芽となった上田彫塑講習会での取り組みを中心として語られていることが明らかとなり、そうした実践がそれ以降の美術教育にどのように具体的な影響を及ぼしたかということを明らかとすることが研究課題として明確になった。また、上田彫塑研究会のメンバーを中心とした、長野県の石井鶴三ゆかりの人物と、その関係性の一部が明らかとなった。これらの研究成果については、研究紀要集へ論文として発表するとともに、美術教育系学会で口頭にて発表した。 また、具体的な資料の整理、スキャニングについては、1、オーバーヘッド型のスキャナを用いた資料のスキャニングのテストを行い、実用に耐えることを確認し、今後のスキャニングとデジタル化の方法を確立した。2、上述の調査によって、長野県の石井鶴三関係者についてのリストを作成し、今後の調査対象資料を絞り込んだ。3、試験も兼ねて100通程度の書簡についてスキャニング、デジタル化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、石井鶴三の美術教育史的な位置付けについて確認し、また、その活動の年表的な整理を行うことで、今後の資料整理の範囲と、その方針について、具体的な方向性を獲得することができた。また、資料のスキャニングとデジタル化についても、具体的な方法を確立することができた。一方で、すでに発行されている石井鶴三関係資料が膨大であり、今回整理の対象としている資料の一部が、それらの中で既に発表されているという事実が判明したために、それら資料の実際の整理に入る前に、既刊行資料の精緻な調査が必要となったため、具体的なアーカイヴィング作業について予定より若干の遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、1、大正期、昭和期における他の美術教育的動向との関連についての調査、2、近代的彫塑教育への石井の具体的影響関係についての調査、3、資料のアーカイヴィングがある。 1、2については、本年度の研究成果として、石井鶴三のプロフィールに関わりながら美術教育史的な定位を行ったが、その発展的課題として、自由画教育運動や手工教育改造論などの、同時代的な展開と、石井の美術教育思想および実践がどのように関わるかということを明らかにするとともに、さらにそのような展開の中でも具体的に戦後期まで続いた活動である石井の取り組みが、その後の美術教育、とくに彫塑教育にたいしてどのように影響しているかということを明らかとすることが次の課題となった。これらについて、関係資料収集、精読および関係者、機関への調査を行う。 3については、本年度作成のリストに基づいて、該当資料についてのスキャニングおよびデジタル化を継続しておこなう。また、資料の公開の方法や手続きについての検討を行う。 適宜研究成果については、論文および口頭発表などの方法によって公開を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度予定していたアーカイヴィングに関わる作業について、次年度以降へと一部持ち越すこととなった。それに伴って、資料を所有している信州大学附属図書館への旅費の一部および、文献複写と翻刻に関わるものとして予定していた謝金について本年度未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度繰越し額については、H.27年度請求額と合わせて、アーカイヴィングの具体的作業(スキャニング、デジタル化、翻刻など)に関わる経費として使用する。具体的には附属図書館への移動旅費、スキャニング、翻刻者への謝金などとして使用する予定である。それらについては、当初より、次年度も継続して実施する予定であったが、これらの予算を使用することによって、より効率的に作業を行うことが可能となると考えられる。
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