2014 Fiscal Year Research-status Report
サクセスフル・エイジングとシチズンシップの観点からみた「農」のあり方に関する研究
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26870242
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
林 琢也 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (50572137)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 都市農業 / 市民 / 地産地消 / 直売 / 食と農の乖離 / 営農環境 / フリーライダー / 市民農園 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,主に岐阜市を事例に現地調査を進めた.まず,岐阜市健康ふれあい農園を取り上げ,その利用実績について調査を行った.また,JAぎふ長良支店で行っているブドウの援農プロジェクト参加者の意識について調査を実施した.両結果から,市民の「農」に対するニーズは一定程度,存在しており,市民農園や直売所などの利用は増加基調にあることがわかった.その他,学生と市民が企画・実践したブドウを利用した集客イベントについても実態把握を行った. 一方,担い手である生産者への調査も併せて実施した.市内の花きやブドウ,イチゴを栽培する農家・農業機関に対し,聞き取りを行い,市街化区域内に農地の多い岐阜市において生産者の抱える営農環境悪化の影響や周辺住民との関係性について把握した. さらに,名古屋大都市圏における都市農業の実態を把握するための基礎作業として,農業や観光・レクリエーション等に係る各種統計を用いて東海3県の市町村別の農業・農村地域の特性を分析・整理した. 以上の結果,都市住民のなかでも,農作業や土に触れることに興味を示す市民層と新鮮で安全・安心な農産物を手に入れたいといった食(収穫物)にのみ関心を示す層,食や農に積極的に関わりをもつ市民層,無関心層といったように,いくつかのタイプが存在し,今後は宣伝・広報の方法や参加可能な企画の内容にバリエーションをもたせるといった工夫を行い,多様な市民層を巻き込む活動や意識付けの充実が必要なことが伺えた. こうした実態を把握することは.都市における「食と農の乖離」を緩和するといった,実践的な効果を考えるという意味でも重要であり,また,多様な価値観をもつ住民の集まる都市における「農」のあり方やそれを支える市民の役割を考察していくための基盤になる作業でもあり,そこに研究上の意義があると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地調査・資料収集と並行して,学会発表や関連する内容を含む論文の執筆を行うことができた.ただし,調査内容について,消費者や地産地消に関わる店舗への調査は不十分となってしまった.この点は次年度に補足したいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては,1年目に実態把握の不十分であった,地産地消に関わる店舗への調査を2年目の調査内容と並行して行いたい.2年目は,地産地消や食育活動に積極的な都市住民の実践事例の検討と「農」的な活動に参加する高齢者の実態および意識に関する調査を行う予定であるが,都市の中の「農」に関わる主体は多様であると同時に,様々な活動や人材等はオーバーラップしているため,上記の複数の調査を精力的に進めることは相乗効果という意味でも,研究成果全体の質的向上を促すと考えている.
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Causes of Carryover |
今年度の調査及び資料収集を完了させた時点で,若干の残額が発生した.日程的にも旅費として使用することは難しく,次年度の現地調査を充実させることが最終的な研究成果の向上にも資する部分が大きいと判断し,結果,次年度使用額を生じさせることとなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
対象地域での調査旅費および資料収集にかかる費用として使用する.
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