2014 Fiscal Year Research-status Report
アルコールCVD法によるグラフェン直接成長とドメイン拡大新手法の開発
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26870247
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
中村 篤志 静岡大学, 工学研究科, 准教授 (50402243)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / ナノ材料 / 半導体物性 / マイクロ・ナノデバイス / 結晶成長 / 高分子構造・物性 / 先端機能デバイス / 電気機器工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンを材料とする透明電極をはじめ光電子デバイス、フレキシブルデバイスの研究・開発は,近年ますますその重要性を増している。本研究では,グリーンデバイスに貢献するナノカーボン材料であるグラフェン膜のフレキシブルディスプレイデバイス応用、新規デバイス展開について共同研究を行った。グラフェンは1原子厚さの炭素原子シート状構造であり、高い透過性と電気伝導性があり、光学特性、電気輸送、磁場効果、スピン輸送など幅広い応用が期待されている。我々は安価で安全なアルコールを原料に用いたグラフェン膜の直接成長技術を基に透明電極の可能性を追求する。具体的には、フレキシブルディスプレイ、電子ペーパーへの応用を目指し、グラフェン膜を基板とした有機分子の配向制御による新規無機/有機ハイブリッドELデバイスの展開、極薄導電膜をチャネル層に用いた電子輸送デバイスを展開することを目的として研究を行った。アルコールCVD法による直接成長させたグラフェン薄膜の成長メカニズムを解析するとともに、グラフェン薄膜をNi金属による析出現象を利用してドメイン境界を解消してドメインサイズを拡大させる新技術を開発する。実用の透明電極に用いられる、シート抵抗500Ω/sq、透過率85%以上(@550nm)を達成するために、具体的に以下の項目を実施した。 ・シート抵抗の低減:直接成長条件の最適化、Ni薄膜蒸着、再蒸発によるドメイン拡大 ・新しい直接成長基板の検討:BaF2基板上グラフェンのドメイン拡大、シート抵抗の低減 ・グラフェンの電極応用:ショットキーPVデバイス、液晶デバイス電極、FETの作製 成長基板表面の原子配列に注目してグラフェン直接成長のメカニズムの解明をし、ドメイン発生の起源を明らかにした。新手法でドメインサイズを拡大させた。グラフェン電極応用のフィージビリティースタディーとして、上記デバイス動作特性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルコールCVDグラフェン膜の結晶性改善が実現した。これまで、酸化物基板上(サファイア基板、SiO2/Si基板、水晶基板、合成石英ガラス)で典型的には、ドメインサイズ約20nmで、透過率約90%、シート抵抗約5kΩ/sqの透明グラフェン膜が得られていた。さらに透明電極としてのグラフェンの結晶性を改善するために、成長後のグラフェン膜にNiをEBで50nm程度の薄さで堆積し、アニール処理を施すことで、Ni中に成長したグラフェンを溶解させて再析出することでドメインを120nm程度に拡大することに成功した。さらに残留Niを酸でエッチングして取り除くと260nmまでドメインが拡大したグラフェンが得られることが明らかになった。しかしながらこれらのグラフェン膜は基板サイズで連続膜になっておらず、シート抵抗を測定することができなかった。そこで新たにBaF2基板を選択することでドメインサイズを50nmまで拡大することが出来た。これらの結果は3月14日の第62回応用物理学会春季講演会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.新規直接成長基板の探索:2次元カーボン成長をサポートするエピタキシャル基板として、六方晶ZnO単結晶ならびにエピタキシャル膜上に直接グラフェンを成長する。H26年度研究成果ではBaF2基板を新たな成長基板として選択し、直接成長グラフェンとしては初めての良質なグラフェン膜がドメインサイズで50nm、シート抵抗900ohm/sqを実現した。この成長メカニズムを詳細に調べたところ、BaF2基板表面のF原子と原料であるエタノールの酸素原子との交換でBaOが先に形成され、その酸素表面上でグラフェンが形成されていることがわかった。そこでさらなるドメインサイズの拡大を実現するためには酸素原子のテンプレートが必要であり、同結晶構造であるZnOを選択するに至った。 2.フィージビリティスタディーとしてエピタキシャルグラフェン膜上にポリイミド膜の共重合膜の形成をし、電子デバイス応用を目指す。 3.グラフェン/ZnO系結晶の発光・受光デバイスの試みとエネルギーデバイス実現への足がかりをつくる。
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