2014 Fiscal Year Research-status Report
裂手裂足症およびその類縁疾患を招く遺伝学的機序の解明
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26870255
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
永田 絵子 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (90535569)
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Project Period (FY) |
2014-02-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人類遺伝学 / 小児科学 / 先天奇形 / 整形外科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度における主たる成果は以下の通りである。 集積された全51家系のアレイCGH解析、重複融合点のシークエンス解析、およびqPCR解析を終了した。 ①51家系中27家系において、17p13.3領域のBHLHA9を含む同一融合点を有する210,050 bpの2コピーあるいは3コピーのタンデム重複を同定した。このコピー数増加は、四肢形成不全を有する27家系中の患者42例全例のみならず、一見正常表現型の家族47例中22例においても同定された。特に、両親が共に正常表現型のときには、必ず両親のいずれかが保因者であった。さらに、一般集団1000名中2名において同定された(発端者対一般集団、P=3.5×10-37)。重複領域内のハプロタイプパターンは多様で、重複融合点のゲノム構造に相同性はなく、1つの融合点周辺は複製異常を生じやすい構造に富んでいた。罹患患者において、指趾異常は手に多く(P=6.2×10-9)、長管骨の異常は下肢に多く(P=4.1×10-5)かつ3コピーのタンデム重複患者に多かった(P=0.047)。マウスBhlha9は、胎児期の肢芽において明瞭に発現していた。 これらの結果は、BHLHA9遺伝子重複が量効果を有する種々の四肢形成不全の顕著な感受性因子であることを示す世界初のデータである。複製期のエラーで生じた日本人創始者重複が、その後の組み換えを介してコピー数増加やハプロタイプパターンの多様性を獲得しながら保因者を介して広く分布し、特定の遺伝的背景を有する個体において四肢形成不全発症を招いていると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の成果が挙げられていることによる。 (1)BHLHA9遺伝子重複が量効果を有する種々の四肢形成不全の顕著な感受性因子であることを示す世界初の成果である。 (2)複製期のエラーで生じた日本人創始者重複が、その後の組み換えを介してコピー数増加やハプロタイプパターンの多様性を獲得しながら保因者を介して広く分布し、特定の遺伝的背景を有する個体において四肢形成不全発症を招いていると推測される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下を重視して行い、裂手裂足症およびその類縁疾患における疾患成立機序の解明を目指す。 (1)BHLHA9の指趾形成における役割の検討のため、メダカを用いたモルフォリーノノックダウン解析を行い、ヒトの指趾に該当するヒレの形態変化を観察する。 (2)重複陽性罹患患者、重複陽性保因者、健常者において、ゲノム関連解析を行い、Modifierの同定を目指す。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予想していた研究成果はほぼ計画通り十分得られたが、代表者は、平成26年度の4月1日から6月30日まで、産後休暇と育児休暇を取得したため、BHLHA9の指趾形成における役割の検討におけるメダカのモルフォリーノノックダウン解析実験およびModifierの同定におけるtag-SNP関連解析においては十分な実験をすることができなかったことが考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度において、モルフォリーノノックダウン解析実験およびtag-SNP関連解析を重点的に行う予定である。さらに、今回の研究成果で得られた知見に基づいて、全国よりさらなる検体が集積されている。その検体においても、アレイCGH解析、遺伝子変異解析を精力的に行う予定である。
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Research Products
(2 results)