2014 Fiscal Year Research-status Report
GADD34遺伝子欠損が老化に伴う2型糖尿病や脂肪肝発生に及ぼす影響の解析
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26870257
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西尾 尚美 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80513457)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インスリンシグナル伝達系 / 脂肪肝形成 / GADD34 / 老化 / 高脂肪食摂取 |
Outline of Annual Research Achievements |
in vivoの解析 肥満、2型糖尿病、脂肪肝発生の表現系の解析として、3, 10, 15, 17, 20ヶ月齢のGADD34KO マウスとWT マウスを比較して解析肝臓と脂肪組織の組織学的解析、 血清生化学検査測定 、脂肪量測定、Glucose tolerance test, Insulin tolerance testを行い、この結果からGADD34の発現がマウスの肥満抑制に関与することを確認した。また、脂質過剰生成の状態を作るため若齢マウスにHFDを摂餌し、WTとKOマウスで比較したところ、KOマウスでは脂肪肝形成が早く、インスリン抑制が早い段階で認められた。 GADD34によるミエロ系細胞による炎症の抑制については既に報告しているが、本実験系においてもマウスの肝臓や脂肪組織中のミエロ系細胞の解析を行い、GADD34はこれらの細胞浸潤による炎症を抑制することで、2型糖尿病や脂肪性肝炎を抑制していることが示唆された。さらに詳細なメカニズムの解析を行うため、マウスの肝臓と脂肪組織のシグナル伝達系(インスリンシグナル伝達系、及び増殖因子による増殖シグナル伝達系)のウェスタンブロッティングを行ったことろ、若齢マウスではKOマウスの方が若齢でインスリンシグナル伝達系が促進しており、加齢やHFD摂餌とともにWTに比べて顕著に低下することを明らかにした。 in vitroの解析 GADD34がインスリンシグナルのどこに関与しているかを詳細に検討するため、MEFを用いてインスリン刺激、脂肪酸刺激などを行い、GADD34がインスリンシグナル伝達系を抑制している可能性を明らかにした。更に、肝細胞培養の系を立ち上げ、若齢マウス、老化マウスともに肝細胞の培養を可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はGADD34KOマウスの表現型の解析と高脂肪食摂餌実験によって、脂肪肝形成をGADD34遺伝子が抑制するという知見が得られた。GADD34が脂肪肝形成する詳細なメカニズムの解析については、マウスの肝臓組織や脂肪組織に加えて、MEF細胞を利用することで、インスリンシグナル伝達系においてインスリンレセプターの上流でGADD34が抑制していることを突き止めた。これらの研究結果を本年度中に論文にまとめることができ、現在、論文を投稿しリバイス中である。 以上のように、GADD34が脂肪肝形成に関与していることの裏付けをとり、メカニズムに一歩踏み込め、さらに、それらの結果を論文として報告できるところまで進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、GADD34はインスリンシグナル伝達系を抑制する事で、脂質生成に関与する事が明らかとなった。しかし、インスリンシグナルのどこでGADD34が関与しているかについては「上流」とだけしかわかっていない。そこで、肝細胞の培養系を確立でき、肝細胞ではGADD34の発現が強いことを確認できたので、今後はこの肝細胞の培養系を用いて、どの蛋白を標的にGADD34が抑制に働いているかについて、インスリン刺激や脂肪酸刺激を行って詳しく解析し、そのメカニズムを明らかにする。 またこれまでの実験結果から、脂肪肝形成の初期段階にはインスリンシグナルが関与するが、長期になるとERストレスの関与も考えられる。長期にわたって脂肪肝が形成される老化における脂肪肝形成のメカニズムはERストレスの関与も検討する必要がある。今後はインスリンシグナル伝達系に加えてERストレスについても解析する予定である。
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