2014 Fiscal Year Research-status Report
電子チャネリングによって捉える発光する原子/空孔の姿
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26870271
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大塚 真弘 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60646529)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カソードルミネッセンス / 電子チャネリング / 発光材料 / 透過電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、カソードルミネッセンス(CL)分光装置と電子ビームの入射角度走査(ビームロッキング)が可能な透過電子顕微鏡(TEM)を組み合わせて、電子チャネリング現象を利用した発光材料中の発光中心の占有サイト・濃度を定量的に検出する方法の確立に向けた諸検討を進めた。対象材料として電気双極子遷移ならびに磁気双極子遷移に由来したCLを示す発光材料であるEu添加Ca2SnO4を用い、ビームロッキングに対するCL強度変化をマッピングしたインコヒーレントチャネリング図形(ICP)の収集によりCLによって電子チャネリング現象に由来したサイト選択的情報を得ることが可能であるかを検討した。その結果、CL-ICPはEuの占有サイトの情報を含む特性X線強度によるICPと比較して異なる強度分布であることがわかった。この図形の詳細な解釈は検討中であるが、懸念点であった励起過程の非局在性によるサイト選択性を含まない図形とは異なるものであるため、何らかのサイト選択的情報を含むものであることが推察されている。今後は理論計算などを用いてCL-ICPの形成についてより詳細な解釈の確立が必要である。これらに加えて、先ずはX線ICPに対する結果であるが、ICPの組み合わせから添加元素などの占有サイト・濃度を理論計算と統計的解析手法を組み合わせによって定量化する解析方法の確立も行い、いくつかの複雑な結晶構造を持つ実用材料に対して成功を収めた。本定量化手法をビームロッキングTEM-CLデータに適用できるように拡張していくことが実用発光材料の解析を確立していく上で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、実用発光材料中に含まれる発光中心の占有サイトや濃度を電子チャネリング現象を利用して定量的に評価する分析手法の確立を目指している。既に、実用発光材料に対して何らかのサイト選択的情報を示すチャネリング図形の収集に成功しているが、この図形の強度分布に対する精密な解釈が不十分である。そのため、各種実験条件での検証実験の実施と理論計算手法の確立の両面から検討を進めていく必要がある。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成26年度の諸検討によって得られたCL信号によるチャネリング図形の解釈の精密化を中心に進めていく予定である。具体的には、測定時の温度や結晶方位などの影響を実験的に検討していくと共にチャネリング図形の理論計算のためのプログラムの開発とそれを用いた理論的検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初予定では平成26年度にCL分光装置の性能向上のための改良を施す予定であったが、実験的検討を重ねた結果、現行のスペックで十分な性能であることがわかった。そのため、予定していた装置改造のための費用が不要となり、代わりに最適な分析用試料の作製のための加工費用を支出したが、その差分が次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
精密なデータの解釈の確立および定量解析のためには、理論計算の実施が不可欠である。そのため、計算環境の充実化が当初計画の要であった装置改良に次いで重要な課題となっている。そこで、平成26年度からの繰越額を利用しての高性能計算機(ワークステーション)の導入を検討している。
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Research Products
(3 results)