2015 Fiscal Year Research-status Report
市場経済化するラオス農山村の脆弱性/安定性と複合生業の諸機能
Project/Area Number |
26870275
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
廣田 勲 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50572814)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域植物資源 / 在来知 / 資源の枯渇 / 植物資源のインベントリー |
Outline of Annual Research Achievements |
ラオス北部の農山村では、不安定になりがちな農業生産を安定化させるように、様々な活動を組み合わせた複合的な生業が営まれてきた。しかし現在、市場経済の浸透にともなって生産活動が一部の活動に特化し、複合的な生業形態は失われつつある。本研究は、市場経済化する農村社会における複合生業を様々な側面から評価し、地域の持続的かつ安定的な発展のための生業のあり方を提示することを目的とする。 2015年度については、2016年2月から3月にかけてラオス北部で特定の村落を対象とし現地調査を行った。まず、前年度とは異なる調査地において植物資源利用に関する聞き取り調査を行った。聞き取り調査の結果、豊富な植物種が利用されていることが改めて明らかになるとともに、地域の外から資源を求めて訪れる外部の人間との接触により、これまで資源としては認識されていなかったものが、現金収入減をもたらす新しい資源として利用されるケースが相当数確認された。これらは外部の人間によって多くが短期的にかつ集中的に収集されていた。資源量が十分でない植物種に関しては、地域住民が限られた資源に殺到し、数年で枯渇してしまう事例も多くみられた。しかしその一方で幹部や古老等が自発的に採取のためのルール作りをした村落では資源の枯渇は免れていたことがわかった。 またこれと併せて、植物資源に関する植生調査を行い、有用植物の現地名と使用部位、使用方法等を含むリストを作成し、前年度の植物資源の資料の充実を図った。またこのリストに基づいて広域調査を行うための準備として、それぞれの植物種について画像資料の準備および少数民族による植物種の現地名の発音を録音した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の調査は当初雨季と乾季に2回予定していたが、実施できたのは乾季の1回のみであった。これは、研究代表者の所属機関の異動にともなった諸々の業務が生じたためである。調査のための時間を確保するため渡航期間をやや長めにとることでこの不足を補った。この変更はやや急であったが、現地機関との関係を良好に築けていたため問題を生じることはなかった。本年度はほぼ予定していた内容の調査をこなすことができたため、進捗状況についておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
概要にも記述した通り、ラオス北部では豊富な植物資源が利用されていることが再確認された。しかしその一方で、外部の人間による収集活動により一部では枯渇するなど、脅かされていることが明らかとなった。次年度はこの情報を踏まえ、短期間に資源の枯渇を引き起こすような現象が地域でどの程度起こっているのか把握する予定である。これによりこれまで表面には出てこず見えにくかった、地域に局在する資源動態の一端を明らかにできる可能性がある。 また次年度以降も、ラオス北部の生業および地域資源の変遷に関するデータを継続して収集する予定である。 また、これまで作成している植物資源のリストがより充実したものとなってきた。次年度以降も継続して情報を収集して、より一層のリストの充実を図る。
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