2015 Fiscal Year Research-status Report
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26870289
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
多羅間 大輔 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 研究員 (30722780)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Hamilton力学系 / 完全積分可能系 / 安定性解析 / Lie環論 / 自由剛体 / Kummer曲面 / 微分方程式 / quadriic line complex |
Outline of Annual Research Achievements |
スイスの研究者と共同でLie群上の自由剛体の力学系について平衡点の安定性を解析した.平成27年度,U(n)の場合の(一般の随伴軌道上の)孤立平衡点についての安定性解析の結果(全て楕円型になる)に関する共著論文が出版された. 平成26年度までに,複素半単純Lie群の正規実形・コンパクト実形の場合や, Bloch-Iserles系の場合の結果が得られていた.より一般に,任意の実半単純Lieの場合の安定性解析が望まれていた. 平成27年度はこのような背景の下に考察を進め,まず村上(1965年)による実単純Lie環の分類に基づき任意の実単純Lie環の固定されたCartan部分環に対して定義される一般化された自由剛体の力学系の平衡点について安定性を解析した.対合的内部自己同型に対応する実単純Lie環上では孤立平衡点は全て楕円型となる.対合的外部自己同型に対応する実単純Lie環上でも孤立平衡点の安定性を解析した(結果は極めて複雑).現在,一般のCartan部分環に対して安定性解析を行っており,結果がまとまればこれまでの結果と合わせて公表する予定である. 次に,国内の研究者と共同でKummer曲面の幾何学と関連する微分方程式について研究した.自由剛体の力学系の固有ベクトル写像に特別なKummer曲面が現れることが分かっている.しかし,一般のKummer曲面と密接に関係する微分方程式については明らかでない.そこでquadric line complexによるKummer曲面の記述を用いてKummer曲面の接触多様体へのある種の埋め込みを考え,Kummer曲面が解とみなせる偏微分方程式系を見出した.また,quadric line complexを変動させて得られるK3曲面と楕円曲線による2重ファイバー空間の構造を調べた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,当初の研究推進方策とは異なるがLie群上の自由剛体の平衡点に関する安定性解析を中心に研究を行った.その結果,任意の実単純Lie群上の自由剛体の安定性解析に関して一般的な考察を進めることができた.近いうちに実単純Lie環上の任意のCartan部分環に対応する自由剛体の安定性解析を行い,結果をまとめて公表する予定である.数値計算アルゴリズムとの関係に関しては残念ながら進展しなかったが,3年目・4年目に集中して取り組む予定である.一般化された自由剛体の力学系に関連して,冪零Lie群上の左不変計量に関する測地流の可積分性についての研究をドイツの研究者と共同で始めた. Kummer曲面の幾何学と微分方程式に関する研究も進展した. さらに,フランスの研究者とのCalogero-Moser系や低自由度可積分系の幾何構造に関する共同研究や,楕円ファイバー空間や量子力学系についての研究も継続中である. 以上より,研究全体の進捗はおおむね順調といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は27年度までの研究に引き続き,実半単純Lie群上の自由剛体の力学系の安定性解析を優先的に行う.また,冪零Lie群上の左不変計量に関する測地流の可積分性や安定性解析,付随する熱方程式の熱核や対応する量子力学系等についても研究を行う.さらに,Lie群上の可積分測地流と数値計算アルゴリズムとの関係を考察する. 楕円ファイバー空間のWeierstrass標準形を底空間が実多様体の場合へ拡張し,実2次元多様体上のLagrangeファイバー空間の分類へ応用する. LagrangeのコマやKowalevskiのコマなどの低自由度可積分系の複素解析幾何的構造を解明する.またKummer曲面の幾何学と関わる微分方程式についても研究を続行し,低自由度可積分系との関係を調べる.
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Causes of Carryover |
平成27年度中は,外国出張や新年度からの所属変更の準備のため,新たな計算機を導入してLie群上の可積分測地流と数値計算アルゴリズムとの関係を調べる研究を行うことができなかった.また,実際の研究の進展には影響しなかったが,書籍等の物品購入も予定通り行うことができなかった.そのため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後,平成28年度には新しく計算機を導入しLie群上の可積分測地流と数値計算アルゴリズムの研究を行う.また,これまでにいくつかの共同研究が始まっているため,その研究打合せ・成果発表等のための出張旅費や資料収集のための書籍購入などに次年度使用額分を用いる予定である.
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Research Products
(13 results)