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2014 Fiscal Year Research-status Report

単一細胞内における情報伝達物質の濃度変化を計測する細胞内蛍光センサーの開発

Research Project

Project/Area Number 26870291
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

坂口 怜子  京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 助教 (80723197)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2016-03-31
Keywordsシグナル伝達 / タンパク質工学 / 分子認識 / 蛍光イメージング / 単一細胞測定
Outline of Annual Research Achievements

生物の細胞内では、必要に応じて様々な情報伝達物質が産出され、その濃度を変化させる事で下流に情報を伝達している。情報伝達物質の中でも、イノシトールポリリン酸類 (InsPn) は細胞内Ca2+を制御する分子群として重要だが、最も代表的なIns(1,4,5)P3やその代謝産物であるIns(1,3,4,5)P4以外の各誘導体の、生きた細胞内における検出手段は非常に限られている。本研究では、細胞内の様々なInsPnのうち、Ins(1,4,5)P3のすぐ下流で産出されるIns(1,3,4)P3とIns(1,3,4,6)P4に対して、その濃度挙動の経時変化を、生きた単一細胞内で、蛍光法を用いて高感度で検出できる技術を開発し、これらを用いて細胞内Ca2+制御の機構を明らかにすることを目的とする。
標的物質であるIns(1,3,4)P3・Ins(1,3,4,6)P4と、他のInsPnの間には非常に僅かな差しかなく、各々に特異的な天然受容体は報告されていない。この差を見分けて選択的に検出する人工受容体の作製には、なるべくたくさんの受容体候補の中から、目的に合う分子を選び出す手法が適切であると考え、平成26年度はまず、7残基のアミノ酸ライブラリーの中から、Ins(1,3,4)P3に特異的に結合する配列をphage display法で選択することを試みた。5ラウンドの結合・洗浄による選択の後、Ins(1,3,4)P3に結合する分子種のプールが得られた。各配列の、標的に対する親和性・選択性については今後評価を行う。こうして得られた最適配列をIns(1,4,5)P3に特異的に結合する天然のタンパク質、PLCδ1 PH domainの基質結合部位周辺に導入することで、Ins(1,3,4)P3に特異的な人工受容体を作製する。同様の手法をIns(1,3,4,6)P4にも試みる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

平成26年度はまず、本研究で標的物質としているIns(1,3,4)P3に対する人工受容体構築のために、Ins(1,3,4)P3に高選択的に結合する7残基のアミノ酸配列をT7 phage display系でランダムに提示させたライブラリーの中から選び出すことを試みた。7残基のアミノ酸を用いることで、理論上ライブラリーの多様性は20の7乗通りが確保できる。ライブラリーの準備は順調に進んだが、次の段階であるライブラリーからの目的アミノ酸配列の選択系の確立において、結合配列が既知のポジティブコントロールとして用いたビオチンに対する結合アミノ酸配列の選択について予想される結果が得られなかったため、詳細な条件の検討を行う必要が生じた。その後Ins(1,3,4)P3に対して結合する配列の選択を行い、目的分子種のプールを得た。次に、他のInsPnに結合する分子種を排する逆選択を行い、標的物質にのみ高選択的に結合する配列を選び出す予定である。
当初の予定ではもう一つの標的物質であるIns(1,3,4,6)P4に対して結合する分子種も並行して選択する予定であったが、最適な選択圧条件を再検討するために別々に行うこととした。
平成27年度においては、他の標的物質であるIns(1,3,4,6)P4に対する結合配列を選択する操作(選択系が確立済み)と、得られた配列からの人工受容体作製・蛍光発色団融合の操作を同時並行で行うことができる。その後、作製したセンサーの細胞内での評価を行い、立案段階当初の研究計画を研究実施年度中に達成できる見込みである。

Strategy for Future Research Activity

平成27年度は当初の計画通り、得られた配列から作製した受容体を蛍光発色団と融合させ細胞内で評価する。
GFP付加型InsPnセンサーの作製には、遺伝子上でGFPのループ部位を切断し、作製したInsPn特異的な人工受容体を基質結合部位付近で二分割したものをそれぞれ付加する。この設計により、基質結合に伴う僅かな構造の変化が節動としてGFP発色団に伝わり、基質濃度依存的な蛍光強度の変化を測定できる。改変部位は、三次元結晶構造情報から、発色団形成や基質結合に影響のない残基を選ぶ。このセンサーは、遺伝子導入のみで非侵襲的に細胞内発現ができる。また、必要に応じて恒常的にセンサーを発現する株の作製も検討している。
一方、蛍光分子修飾型センサーには、作製した人工受容体上で、基質との結合部位付近、かつ基質と直接相互作用しない残基を選び出す。この残基を遺伝子上でシステインに変異させ、チオール選択的に蛍光分子で修飾し、蛍光性センサーに変換する。このセンサーは更なる遺伝子操作なしで、細胞内に外から導入できる。導入する蛍光分子の種類や、蛍光分子導入残基を変えることで、ダイナミックレンジや検出波長の異なる様々な類縁体を作製予定である。
このようにして作製した各センサーを用いて、蛍光顕微鏡で細胞内InsPn類を個別にリアルタイムに観察する。外部からの刺激に対し、各InsPnがどのような時間軸で、産出・代謝されるか定量的に計測する。また、蛍光特性の異なるセンサーを複数併用して、細胞内の同一の場所において各InsPnが互いに及ぼす影響の評価を試みる。神経・皮膚組織・免疫細胞など様々な細胞種を用い、さらには細胞内の各小器官への局在シグナルを付加し、細胞内部位特異的なInsPn産出を検出する。

Causes of Carryover

研究の進行上、ライブラリーからのセレクション系の確立に手間取り、標的分子に結合する分子種を得る過程が若干遅れた。そのため、得られた分子種の、標的分子に対する選択性・親和性を試験管内で評価するための標準試料とする競合各種InsPn、および得られた分子種を化学修飾するための各種蛍光試薬類について予算執行が遅れた。また、既設の蛍光顕微鏡に付設の半消耗費であるフィルターユニット類の、経年劣化に伴う新調のための予算を計上していたが、想定よりも長持ちしたために今年度の購入を見送った。以上の理由から次年度使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

今年度は、当初の計画通り、得られた分子種の標的に対する選択性・親和性を試験管内で評価するための標準試料とする競合各種InsPn、および得られた分子種を化学修飾するための各種蛍光分子やその他細胞培養に必須な消耗品・試薬類について予算を執行する。また、既設の蛍光顕微鏡用のフィルターユニット類・ランプ類などの半消耗品類も必要になる予定である。
更に、研究遂行上必要な情報収集や成果の報告のために数件の学会参加を予定しており、その旅費も計上している。

  • Research Products

    (5 results)

All 2015 2014 Other

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (2 results) (of which Invited: 1 results) Remarks (1 results)

  • [Journal Article] Fluorescent sensors reveal subcellular thermal changes2015

    • Author(s)
      Reiko Sakaguchi, Shigeki Kiyonaka, Yasuo Mori
    • Journal Title

      Current Opinion in Biotechnology

      Volume: 31 Pages: 57-64

    • DOI

      10.1016/j.copbio.2014.07.013

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Deciphering Subtype-Selective Modulations in TRPA1 Biosensor Channels2014

    • Author(s)
      Daisuke Kozai, Reiko Sakaguchi, Tomohiko Ohwada, Yasuo Mori
    • Journal Title

      Current Neuropharmacology

      Volume: 12 Pages: 未定

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] Genetically encoded fluorescent thermosensors visualize subcellular thermoregulation in living cells2014

    • Author(s)
      Reiko Sakaguchi
    • Organizer
      The 87th Annual Meeting of the Japanese Biochemical Society
    • Place of Presentation
      Kyoto,Japan
    • Year and Date
      2014-10-17 – 2014-10-17
  • [Presentation] 異なるメチル基転移酵素による転移RNA認識機構の検討2014

    • Author(s)
      坂口 怜子
    • Organizer
      第46回 若手ペプチド夏の勉強会
    • Place of Presentation
      京都府宮津市
    • Year and Date
      2014-08-03 – 2014-08-03
    • Invited
  • [Remarks] 京都大学工学研究科森研究室

    • URL

      http://www.sbchem.kyoto-u.ac.jp/mori-lab/member/staff_sakaguchi_reiko.html

URL: 

Published: 2016-06-01  

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