2015 Fiscal Year Annual Research Report
生存基盤の確保と環境運動―インド・ウッタラーカンド地方における森林・水問題
Project/Area Number |
26870294
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石坂 晋哉 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20525068)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、環境運動の成否を「生存基盤の確保」という側面から評価するための方法論を構築することである。一般に運動は、政策や、人々の意識や生活に様々な変化をもたらすが、運動の成否は、住民の不満・要求の充足度のみから判断されるべきではない。本研究では、環境運動がもたらすそうした様々な成果・効果を、「生存基盤の確保」という観点から総合的に理解することをめざした。具体的事例として、北インド・ウッタラーカンド地方におけるチプコー(森林保護)運動(1973-1981年)とテーリー・ダム反対運動(1978-2006年)をとりあげて検討した。 平成27年度は、インド・ウッタラーカンド地方の社会運動を研究しているオーストラリア・ウーロンゴン大学のトレント・ブラウン氏を招聘して研究交流を行うとともに、前年度までに収集したサララー・ベーンやクンワル・プラスーンに関する資料の整理を進め、さらに国内外の学会等で発表を行った。 本研究の全体としての成果は、ブラウン氏との共著論文にまとめ査読付き国際雑誌に投稿するとともに、英文単著にまとめ刊行する予定である。このうち例えばチプコー運動の成果・効果に関しては、ウッタラーカンド地方の森林管理のあり方が運動前後でどう変化し、その変化に際し運動がどう寄与していたかという問題設定をしたうえで分析を行い、民間企業(特に域外の)による森林伐採を阻止したのは運動の大きな成果であったことや、森林保護を通じた環境保全という価値が重視されるようになったのは運動だけではなく当時のインド中央の環境派政治家・官僚の力も大きかったことなどを具体的に明らかにした。また、その分析に際しては、運動内外のアクターを整理したうえで、個別のフレーミング自体が変化しつつ影響しあう動態を捉えるという方法を提示した。
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