2014 Fiscal Year Research-status Report
亜臨界含水アルコール中における糖の異性化機構の解明
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26870296
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 敬 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70416311)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 亜臨界含水エタノール / 異性化 / 糖 / 速度定数 / 希少糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
沸点以上の温度で、加圧することにより液体状態を保った水のことを亜臨界水と呼ぶ。この亜臨界水を利用したバイオマスの処理が注目されているが、そこで起こる現象に関する知見は少ない。そこで、モデル物質を用いてその知見を得ようとする研究もなされており、グルコースを処理するとフルクトースが生成することが知られている。しかし、その収率は低い。 一方、含水エタノールを用いてグルコースを亜臨界処理を実施すると、フルクトースの収率が改善し、ごく少量のマンノースも生成する現象を見出している。しかし、フルクトースの収率が改善される理由は明らかではない。そこでこの理由を検証するために、エタノールの添加率を変化させながら、亜臨界含水エタノール処理を実施した。その際に、反応生成物を定量することで、グルコースからフルクトース、マンノースへの異性化速度定数およびグルコースの分解速度定数を算出した。また、フルクトースおよびマンノースについても同様に検討することで、各糖の異性化および分解に関する速度定数を算出した。その結果、含水エタノール中のエタノール濃度が上がるほど、異性化の速度定数は増大した。特に、マンノースからフルクトースへの変換は顕著に加速した。一方、分解の速度定数も増大したが、異性化に比較して顕著ではなかった。この差異が、フルクトースの収率上昇につながったと考えられる。本研究成果は、フルクトースの高収率での生産に寄与できると考えられる。 また、本反応系はこれまでに述べた糖以外にも適用できる可能性があり、ガラクトース等についても同様の検討を行ったところ、希少糖に相当するタガトースが高収率で得られ、タロースもごく少量生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、亜臨界含水エタノールを用いてグルコースやフルクトース、マンノースを処理した。エタノールの添加率を上げることにより、異性化と分解の双方が促進された。しかし、その速度定数には差があり、結果として、異性化が促進された。このことから、研究目的の『③「エタノールの役割」と「反応機構の変化の主因」を明らかにする。』は達成された。 また、『②「フルクトース収率の上昇要因」および「過分解の抑制要因」を素反応の速度解析を行うことで明らかにする。』に関しては、フルクトースの収率上昇の要因が明らかになったことから、結果的に過分解が抑制されたと見なすことが可能であり、達成できたと言える。さらに、ガラクトースも同様の反応により異性化することが確認できた点は、重要な進展であると考えられる。 一方、申請時に購入を予定していたMS関連装置が導入できなかったため、中間生成物および過分解生成物の同定は困難であった。このことから、『①単糖の異性化により生じる反応中間生成物、および過分解生成物を同定する。』は現在のところ達成できていない。今後、方法を変えるなどして再度検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
亜臨界含水エタノールを用いてグルコースやフルクトース、マンノースを処理した。その際の、中間生成物および過分解生成物の同定が達成できていないため、手法を変更して再度取り組む予定である。また、本研究において、過分解生成物には多くの種類があり、それに関連するより多くの副反応の存在が見えてきた。これらの反応挙動解析にも取り組みたい。 さらに、ガラクトースなども同様の反応機構で異性化するすることが確認された。これは、希少糖を合成する上で非常に重要な手法となり得るため、希少糖の効率的生産にも取り組む予定である。
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Research Products
(5 results)