2014 Fiscal Year Research-status Report
pH応答性高分子を利用した高比重リポ蛋白質の細胞内動態制御
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26870301
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
KIM HYUNGJIN 京都大学, 物質ー細胞統合システム拠点, 研究員 (80711457)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | high-density lipoprotein / anionic polymer / endosomal escape / drug delivery / cell-penetrating peptide |
Outline of Annual Research Achievements |
pH応答性高分子 (polyanion, PA)は中性条件下ではアニオン性であり、エンドソーム内の酸性条件下でプロトン化して電気的に中性化、すなわち疎水化することによりエンドソーム膜を破壊する。このPAを高比重リポタンパク質 (HDL)と静電相互作用により複合体を形成させることを目指した。HDLの構成タンパク質apoA-IのC末端にカチオン性のTATペプチドを融合し、更にカチオン性脂質であるDOTAP (1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane)を導入することで、カチオン化HDL (catHDL)を調製することに成功した。catHDLとPAとの複合体形成は、未変性アガロースゲル電気泳動におけるcatHDLの移動度の変化 (=表面電荷の変化)により確認できた。catHDLに存在する脂質重量に対して1.4倍重量のPAを添加した際に、PA結合は飽和に達することが分かった。 PA/赤色蛍光ラベルcatHDL複合体を細胞に作用させた後、その細胞のエンドソームを緑色蛍光色素でラベルした。エンドソーム脱出効率をこれらの蛍光色素の共局在率 (%)で評価した。catHDLのみの処理では、1時間処理で約55%であり、3~5時間ではやや低下し40%の共局在率を示した。一方、PA/catHDL複合体では、1時間の培養で既に約20%と低い共局在率を示した。これにより、catHDLはPAとの複合体形成によって、エンドソーム脱出能力を獲得したことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、エンドソーム内の酸性条件下で構造変化し、エンドソーム膜を破壊するアニオン性ポリマー(poly(alkylacrylic) acid, PA)と生体由来の薬物キャリアHigh-density lipoprotein (HDL)の複合体を用いて、エンドソーム蓄積を回避するドラッグキャリアを開発することである。平成26年度の研究実施計画、(1) カチオン性脂質導入によるカチオン化HDL (catHDL)の調製、および(2) PA合成及びcatHDL/PA複合体条件検討は、上記に示すようにいずれも達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下の二つである。まずは、catHDL/PAのエンドーム脱出を電子顕微鏡により直接可視化する。抗癌剤ドキソルビシン (DXR)あるいはsiRNAをcatHDLに内包することにより、エンドソーム脱出を介して、PAによる薬効増強を確認する。
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Research Products
(3 results)