2015 Fiscal Year Research-status Report
環境エネルギーで動作する組込みシステムのスケーラビリティ管理プラットフォーム
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26870303
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高瀬 英希 京都大学, 情報学研究科, 助教 (50633690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組込みシステム / 消費エネルギー最適化 / 環境発電 / 基盤ソフトウェア / 協調設計環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境電力で動作する組込みシステムを対象とした消費電力管理手法ならびにシステム設計技術の研究に取り組んだ. 1) 同一命令セットヘテロジニアスマルチコアと呼ばれるプロセッサアーキテクチャを搭載した組込みシステムに着目し,新たなタスクスケジューリング手法を提案した.本手法は,高性能コアと高電力効率コアを1対1に対応づけて構成したコアペアをタスク割付け対象として扱い,コアペア間におけるタスクスケジューリングを静的かつ動的に決定し,さらに稼働させるコア種類およびコアペアへの供給電力/動作周波数を適切に制御することで,組込みシステムの消費エネルギー最適化を実現する. さらに,同一命令セットヘテロジニアスマルチコアを採用した組込みシステムにおいて,様々な消費電力管理手法を実機上で定量的に比較評価できる環境を開発した.システム設計者は,既存の消費電力管理手法を本評価環境上で試行することで,対象システムに最適な消費電力管理手法を適切に探索することができる. 2) 再構成可能なハードウェアであるFPGAに着目し,環境電力を動力源とするソフトウェア/ハードウェア協調システムのための設計環境を提案した.本環境は,FPGAとプロセッサが〃チップに集積されたプログラマブルSoCと呼ばれるデバイスを対象とする.ソフトウェア向けの高級言語の記述およびシステム構成記述による指定のみから,高品質な組込みシステムを合成することを可能にする. 3) 環境電力で動作する組込みシステムにおける信頼性向上に着目し,要求される信頼性を保証しつつ消費エネルギーを最小化するコンパイラ技術を開発した.具体的には,部分的に恒信頼な領域を持つオンチップメモリを活用し,真に信頼性の求められるプログラムコードおよびデータのみを本領域に集中的に配置する.本研究成果は,査読付き論文誌より発行された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り,組込みシステムの静的解析および最適化を担うコンパイラ技術の開発を進行させることができた.同時に,実機ベースでの評価環境の構築に重点的に取り組んだ.本研究成果は,組込みシステムのスケーラビリティ管理プラットフォームの有効性を評価するための基盤になるものとして有用であると考えている.なお,本研究成果は査読付き国内シンポジウムで採択されるとともに本シンポジウムの奨励賞を受賞し,査読付き国際会議にも投稿中である. 当初の構想では計画していなかった研究課題ではあるが,システム協調設計環境の開発にも重点的に取り組んだ.環境電力で動作する組込みシステムの設計技術として,有益な研究成果に結びつくものであると期待される. ただし,実行時最適化アルゴリズムの開発については,今年度の作業進捗は停滞することとなった.前述した実機ベースの評価環境の構築およびシステム設計環境の開発に注力したためである.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の主眼である実行時最適化アルゴリズムについて,実機上に適用可能な実用的な手法となるように重点的に取り組む.平成26年度に挙げた研究成果をベースとして,提案手法を発展させていく予定である.そして,提案手法を実機評価環境に適用することで,本研究課題の有効性を検証する. 実行時最適化アルゴリズムと静的解析・最適化手法を統合し,環境電力で動作する組込みシステムのためのスケーラビリティ管理プラットフォームとして構築する.本プラットフォームを,評価環境およびシステム協調設計環境とともに,ひろく公開していく予定である.
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