2015 Fiscal Year Research-status Report
ミックス法を用いたインフォームド・コンセント観察研究の方法論的検討
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26870311
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
八田 太一 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (40598596)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 質的研究 / 観察研究 / がん医療 / 医師患者関係 / 医学教育 / インフォームド・コンセント / 医学教育 / 混合研究法 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフォームド・コンセント(IC)は、十分な説明を受けた患者が治療を受けることに同意をする行為であると同時に、そこでは患者の抱える様々な悩みや関心が語られ、複雑で個別的なやりとりを通して医療者と患者の関係が構築される場でもある。研究代表者は平成21年より、化学療法を導入するためのICを観察し、患者の治療に対する動機づけやそこで展開する対話などを収集してきた。このようにして得られた多様なデータを分析するための方法論としてMixed Methodsを検討することが本研究課題の目的である。 平成26年度までに、60~90分かけて行われるICの展開を4場面に圧縮する記述手法「起承転結フレームワーク」が固まり、平成27年度は「起承転結」という東洋的な認識様式に焦点を当て、この文化的側面をMixed Methodsに組み込むための理路を検討した。その一端をMixed Methods International Research Association Asia Regional Conference(Osaka)および21st Qualitative Health Research Conference(Toronto)にて発表し、方法論と文化の接点について海外の研究者と議論を行ない一定の評価を得た。 また、IC観察研究で使用した「治療に対する動機づけ尺度」(八田ら, 2011, 心身医学)について内的妥当性と外的妥当性に課題が残されていたが、その後の調査によって大学生、健康診断受診者、がん患者にて本尺度が共通の因子構造を持つことが確認された(Hatta et al., 2016, BMC Med Inform Decis Mak)。 平成27年度はIC観察研究における質的アプローチと量的アプローチのもつ頑強性を個別に確認することができたため、次年度はそれらを統合するステージに入る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度より投稿準備を進めていた医療に関する達成動機尺度の数量的検討(研究1)においては2016年2月に採択され、本プロジェクトで掲げた目標を達成した。また、ミックス法の方法論的検討(研究2)に関しても、2015年9月に開催されたMMIRA Asia Region ConferenceにてMixed Methods Communityの母体である北米の研究者より一定の評価を受け、関連雑誌への投稿を奨められた。この投稿の準備に年度を跨ぐ海外出張が必要となり、平成28年度まで研究期間の延長を行なった。なお、臨床家の実践知を可視化する方法論の探究(研究3)についても、上記投稿準備中の論文にてその一端を論じる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の研究計画を立案した当初、量的アプローチを主としたデザインと質的アプローチを主としたデザインとを組み立て、IC 観察研究における量的アプローチの機能と質的アプローチの機能の相違を検討し、医療現場の参与観察で得られるデータの分析方法論を議論する予定であった。Mixed Methodsに関する先行研究や近年の世界的な動向を追う過程で、各アプローチの持つ機能や役割について議論するためには研究の実施される環境や研究者の文化的背景(あるいは、認識論や存在論といった科学哲学的視点からの考察)が肝要となることに気が付くことができた。今後は、そのような方法論的議論を研究手法や研究デザインとして具現化させることで、臨床経験を積んだ専門医のIC をめぐる「全人的な関わり」を可視化する方法論を探究する。
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Causes of Carryover |
2015年9月に開催された国際学会で本研究課題の成果を公表したところ、関連雑誌の編集者より投稿を推奨された。また、2016年3月31日~4月2にミシガン大学にて開催されるMixed Methods Workshopにて論文化に関する情報収集が本研究課題を洗練させる上で不可欠であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記Workshopへの参加費、旅費に充てる。
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Research Products
(6 results)