2015 Fiscal Year Research-status Report
性分化疾患当事者のライフコース研究――医療の介入による逸脱増幅の経験とその影響
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26870312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
入江 恵子 京都大学, アジア研究教育ユニット, 研究員 (10636690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 性分化疾患 / インターセックス / 医療社会学 / 医療人類学 / ジェンダー / 逸脱研究 / 身体 / ヨガ |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目である本年度は、医療化と身体に焦点をあてて研究を遂行した。具体的には、①分析枠組みの検討として、初年度に行った概念構図を基に、当事者の個人レベル(身体)で経験される「医療化」について理論的構築をはかる。自らが経験する身体的違和感という経験を基軸に据え、理解や不信感といった葛藤を認識しながら専門家支配された知と向き合うさまをあきらかにした。②海外調査としては、前年度と同様に当事者グループの協力の下グループミーティングに参加し、サンフランシスコにおいて当事者に対し聞き取り調査を行う。個別に聞き取り調査を行うのと同時に、当事者グループが開催するシンポジウム、講演会等に参加し、さらなるネットワークの構築を図った。 前年度は達成できなかった海外学会での発表を行うことができた。11月にアメリカ・ウィスコンシンで開かれた全米女性学会第36回年次大会(NWSA 36th Annual Conference)にて、「医療化と専門用語の変遷――インターセックスとDSDについて“Medicalization and Nomenclature: Intersex and Disorders of Sex Development.”」の発表を行った。また、同学会大会に加え、8月にアメリカ・レキシントンで開かれた性分化疾患の若者支援の会、11月にオーストリア・ウイーンで開かれた、ヨーロッパを中心とした性分化疾患研究者のミーティングにおいて、情報収集に加え、新たなネットワークの構築と、今後の共同研究の計画について打ち合わせを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度には達成できなかった海外における学会発表を達成することができ、この点は当初の計画をようやく遂行することができたといえる。 当初の計画よりもより進んだ点としては、アメリカの研究者だけでなく、オーストリア、イギリス、イスラエル、イタリア、ドイツの研究者とのネットワークを構築し、具体的な共同研究の計画についても打ち合わせを行うことができた。 本年度達成できなかった、論文執筆による成果発表については、次年度出版に向けて取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究活動を通じて構築したネットワークを生かし、国際的な共同研究グループの立ち上げを行う。 また、前年度までに行った理論的構築と概念構図に、ジェンダー論の視座を組み込む。これにより、性分化疾患の、ひいては、医療の介入によってその身体の逸脱増幅を経験する者のライフコースを包括する分析枠組みを確立する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外で開催される学会に採択されなかったため、海外渡航費用がそのまま次年度使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に再度挑戦し、海外で行われる学会への参加費用にあてる。
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Research Products
(4 results)