2014 Fiscal Year Research-status Report
深さ情報付き手術画像による可触型の術中止血訓練用バーチャルリアリティシミュレータ
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26870322
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粂 直人 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (00456881)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | virtual reality / training / bleeding / depth map |
Outline of Annual Research Achievements |
量産型の止血シミュレータを構築するために,1.画像処理による流血シミュレーション結果の提示,2.実際の術野映像からのピットフォール画像の生成,3.力覚提示デバイスを用いた止血動作,の3つを達成する必要がある. 今年度,1に関して,流血シミュレーションのアルゴリズムを検討した.術野画像から触知可能な三次元形状を構築する代わりに,二次元のデプスマップを術野画像に重畳し,あたかも三次元的な奥行きがあるように簡略化した2.5次元の術野再現をおこなった.現在,術野の平面情報をもとに特定の一点から指定したデプスマップの傾斜に応じた流血の再現が可能である.しかし,臓器間の前後関係と流血のオクルージョンを想定した流血シミュレーションの実現にはいたらなかった. 2に関して,共同研究者から過去の手術映像の提供を受けて,ピットフォールがある場面をいくつか列挙した.しかし,想定されるピットフォールは入手できた手術映像以外にもあるため,手術練習用の豚を用いて対象とするピットフォール場面に近い術野映像の取得が可能か試みた.結果,開腹手術時に取得できる映像は内視鏡映像に比べ臓器全体の移動量が大きくなるためピンポイントにピットフォールを再現することは困難であることがわかった. 3に関して,術野は内蔵が独立に3D空間に浮遊したものではなく相互に連結されており,それぞれを触った時の感覚が異なる.別途開発した把持・穿刺力覚計測機能付きの内視鏡鉗子を用いて,2の術野映像の取得時に,術野内にある臓器の硬さ計測を行った.動脈,静脈,腎臓,肝臓,脾臓,小腸,大腸,膀胱の術野での触感を計測した.従来,術中での臓器の把持動作に伴う臓器の硬さをパラメータ化したデータは皆無であり,臨床的な意義が非常に大きい.本件については現在,学会発表および論文投稿を準備中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
別途開発した把持力計測が可能な内視鏡鉗子を用いて臓器の硬さを計測することが可能となったため,当初3年めに予定していたシミュレータに設定するパラメータの取得を優先することとした.術中での出血パターンと周辺臓器の硬さの関係を明らかにするために,豚を対象とした臓器の硬さ測定を行った. 当初シミュレータのアルゴリズムの完成を初年度に想定していたが,上記の実験のために,今年度で完了することはできなかった.ただし,全体の作業量としては不足なく進んでいるものと考え,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
できるだけ早い段階で,流血のパターンを,オクルージョンの問題も含めて,網羅したアルゴリズムを完成させる. 現在はアルゴリズム検証のために,術野画像を目視して手動でデプスマップを作成しているが,この労力は都度膨大な時間を要するため,可能であれば半自動でデプスマップを生成できるツールを開発する予定である. 臓器の硬さパラメータは,シミュレータを力覚提示デバイスで操作可能となって以降に適用されるものなので,今後データの精査を行いどの特徴をパラメータとしてシミュレータに設定すべきか検討する必要がある.
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Causes of Carryover |
当初予定していたアルゴリズムの実装が後回しになったため,実装に要する費用として見積もっていた人件費を執行できなかった. 当初アルゴリズムのデモ実装を完了し学会発表を予定していたが,上記の理由により学会発表を延期したため,旅費の執行は行わなかった. 当初予定していた画像編集ソフト,モデリングソフトを購入する予定であったが,上記の理由により延期としたため,物品費を執行しなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アルゴリズムの開発と実装に翌年度の予算執行の重点を置くこととする. 今年度の成果発表を翌年度中期以降の学会にて実施する予定である.
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