2015 Fiscal Year Research-status Report
広域分散仮想化環境のためのハイブリッド型トラフィックエンジニアリング手法の研究
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26870325
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柏崎 礼生 大阪大学, 情報推進本部, 助教 (80422004)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レジリエンス / 経路制御 / SDN / OpenFlow / xFlow / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初実施計画では平成27年度において北海道大学のアカデミッククラウドと国立情報学研究所のEdubase Cloudを利用することとしていたが、この2拠点のみでは実証実験が乏しい内容となるため拠点数を増やす活動を続け、国内外合計11拠点からなる広域分散仮想化環境の構築に成功した。この環境上で動作する広域分散ファイルシステムのトラフィックを、同様にこの環境上で動作する仮想ルータ経由で通信させ、また各拠点間を仮想ネットワークによるパスにより接続することで高い自由度で多様なトポロジを構築した。 提案手法を実装した仮想ルータは拠点のゲートウェイとして動作し、可用帯域の計測とインバウンド、アウトバウンドトラフィック量の計測、片方向遅延時間の計測を行い、これらの情報をもとに自律分散型のホップバイホップ経路制御、および中央集権型でエンド・トゥ・エンドのパスを一意に定める経路制御を実現できることを示した。昨年度時点で課題となっていたTCPトラフィック要求へ対応するアルゴリズムを作り、シミュレータ上での評価実験を行った。 広域分散環境における自律的なトラフィックエンジニアリングは、ユーザや管理者がそのチューニングを意識する必要がなくなる点に優位性がある。本提案手法が目的とする広域分散環境におけるスプリットブレインシンドロームへの適応性評価については、単純な障害だけでなく複雑で多様な障害状況を発生させて評価する必要があり、その評価のための検証プラットフォームの構築も本年度の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に示した2拠点のクラウドコンピューティング資源を用いたシミュレーションだけでなく、国内外11拠点(北海道大学、東北大学、国立情報学研究所、金沢大学、京都大学、奈良先端科学技術大学院大学、大阪大学、広島大学、高知工科大学、九州大学、琉球大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校)からなる広域検証を構築することと、この上で動作する仮想ルータの設計と評価を完了させた。 提案する適応的経路制御手法は二種類の経路制御手法の組み合わせとなり、その双方は仮想ルータに実装されている。各々の手法は共通して、可用帯域、インバウンド・アウトバウンドトラフィック要求量、片方向遅延時間の計測を行う。自律分散型手法ではこれらの情報を各仮想ルータが保有し、独自の経路制御表を構築してホップバイホップかつループのない経路制御を実現する。中央集権型手法ではこれらの情報はクラウドコンピューティング環境上の制御サービスへと送信され一元管理され、制御サービスから一意に定められた経路制御表が各仮想ルータに提供される。この制御サービスの構築を完了させた。制御サービスは単一障害点となり得るため、冗長化構成を取り、ANYCAST通信を用いた障害時対応設計を行った。 UDP/TCP通信ともに、過去の通信情報の統計情報をもとに今後の通信状況を仮定して経路制御を決定している。また評価している障害状況の多様性も現時点では乏しいため、今後はより多様なトラフィック要求、多様な障害状況に対する適応性を評価することで、当初想定した以上の成果を得られることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度においては評価実験を進捗させるとともに成果発表に注力することで、当初実施計画で想定した達成目標は完遂できるが、それでは面白みに欠けるのでさらなる課題を設定するのも良い。想定していることとしては研究組織間からなる広域分散環境のみならず、多様なパブリッククラウド間で構成されるシステム群のトラフィックエンジニアリングに本提案手法を利用する方法である。パブリッククラウド間ではトラフィック課金が行われるため、これが新たな制約問題となる。またトラフィックが一様な価値を持つのではなく異なる価値を持つと仮定することで、単に価格を抑制するだけでなく、より高い利益を得るトラフィックエンジニアリング手法の提案へと繋げることが出来ることも期待できる。
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Causes of Carryover |
成果展開を平成28年度に注力するため、平成27年度は当初想定より旅費・機材費を要しなかった。それはとりもなおさず平成28年度にその分を要することとなる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度において抑制した成果展開を積極的に行う。具体的には2件の国際学会発表、1件の論文誌投稿を想定している。
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Research Products
(7 results)