2014 Fiscal Year Research-status Report
担持金属触媒における触媒活性の発現および劣化機構の環境制御TEMによる解明
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26870332
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
神内 直人 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00626012)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 環境触媒 / 燃焼触媒 / 金属酸化物担持貴金属触媒 / 環境制御透過型電子顕微鏡 / ナノ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
担持金属触媒は人体や環境に悪影響を及ぼす有害物質を浄化することができるため、環境触媒として広く実用化されている。触媒の性能向上や劣化抑制を達成するためには、触媒のナノ構造を詳細に解析する必要がある。本研究では、まず一般的な触媒活性評価装置である常圧固定床流通式反応装置を作製した。次に、担持金属触媒として、酸化スズ担持パラジウム触媒を含浸法により調製し、還元雰囲気や酸化雰囲気で様々な前処理を施した。作製した反応装置を用いて、CO酸化反応に対するパラジウム触媒の活性を評価した。 焼成(酸化処理)後のパラジウム触媒では、100度からCO酸化反応が進行し、160度以下で100%の転化率に到達した。一方、400度で水素還元処理後のパラジウム触媒では、180度からCOの酸化反応が始まり、300度で100%の転化率に到達した。これらの結果から、酸化処理後に触媒表面に存在する酸化パラジウムがCO酸化反応を促進させると考えられた。そこで、水素還元処理後に再酸化処理を行ったパラジウム触媒の活性評価を行った。その結果、触媒性能の回復がみられ、110度からCO酸化反応が進行し、170度で100%の転化率に到達した。 貴金属などの限られた資源の有効活用という観点から、劣化した触媒の再活性化は非常に重要である。パラジウム触媒で明らかになった触媒性能の劣化と再活性化の要因を明らかにするため、透過型電子顕微鏡を用いて触媒のナノ構造を調べた。5-7nmの粒子径であったパラジウム粒子が、水素還元処理によって10nm以上へと粗大化し、一方、再酸化処理後は再び微細化している様子とcore-shell構造をした粒子の生成が確認された。以上より、前処理によってパラジウム粒子の酸化状態およびナノ構造が変化することで、CO酸化反応におけるパラジウム触媒の活性の低下、再活性化が起こると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、透過型電子顕微鏡による触媒ナノ構造の解析を中心に据えており、調製した触媒を真空中で観察した後、ガス雰囲気下での観察を行う予定であった。しかし、触媒の活性とナノ構造の相関を調べる上で、触媒性能を評価する必要があると判断したため、触媒活性評価装置の作製に取り組んだ。そのため、真空中での触媒のナノ構造観察は行ったが、ガス雰囲気下での観察はできなかった。次年度はガス雰囲気下での観察に注力し、ナノ構造の変化と触媒活性の相関について調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ガス雰囲気下での担持触媒のナノ構造、および構造変化を環境制御透過型電子顕微鏡により観察し、触媒活性との相関について調べる。特に、前処理によって触媒活性の低下や回復が起こる際のナノ構造の変化に着目し、触媒活性が変化する要因の解明を目指す。以上より明らかになった研究結果を該当する学会や学術雑誌で積極的に発表する。
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