2014 Fiscal Year Research-status Report
越境するパリ・モード―近代デザイン運動からみたポール・ポワレ
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26870359
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
朝倉 三枝 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (90508714)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近代デザイン運動 / ポール・ポワレ / パリ・モード / サロン・ドートンヌ / ラウル・デュフィ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマに基づき、2014年度は2度の調査旅行を行った。 第1回目(9月13日~27日)は、パリのフランス国立図書館をはじめ、ガリエラ美術館、装飾美術館等で資料収集を行い、ポール・ポワレがサロン・ドートンヌで行った際の講演禄や商標登録用の写真など、貴重な資料を入手した。さらにリヨンの織物博物館にも赴き、ポワレとコラボレーションを行った画家のラウル・デュフィのテキスタイル制作に関する調査を行った。その中で、テキスタイル工房をデュフィ自ら描いた貴重な図版資料や、デュフィが1920年代にリヨンのビアンキニ=フェリエ社のために手掛けた一連のデザイン画を閲覧することができた。第2回目(3月14日~22日)の調査では、パリのフランス国立図書館と装飾美術館を中心に、ポワレのサロン・ドートンヌにおける展示状況について、引き続き資料収集を行った。 これらの調査研究に基づき、2014年10月19日に愛知県美術館で「ラウル・デュフィ―絵画とモードをつないだ画家」と題し、ポワレの導きでテキスタイル制作を開始したデュフィについて、最新の資料を交えながら講演を行った。また、2015年3月9日にはFashion Studiesが主催する毛研究会〝Think of Fashion”で講師役を務め、「ポール・ポワレ―ライフスタイルブランドの先駆者」と題し、ファッションにとどまらず、その関心が衣服住すべてに及んだポワレの幅広い活動をたどりながら、「デザイナー」という枠に収まらない新たなポワレ像を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、20世紀初頭にパリのモード界を牽引していたクチュリエ、ポール・ポワレの活動を近代デザイン運動という新たな文脈から捉え直し、そこにおいて彼が果たした役割を解明することにある。 1年目の調査によって、ポワレが1911年以降、参加するようになった秋季美術展「サロン・ドートンヌ」における展示状況に関する調査をパリで進めることができた。サロンの公式カタログ、ならびに新聞・美術雑誌等に掲載されたサロン評などを収集する中、ポワレが1922年にサロンで行った講演禄や、彼が1911年に開設したインテリア工房「マルティ―ヌ」に関する重要な資料を見つけることができた。また、装飾美術館では、商標登録用に撮影された膨大な数の写真資料の閲覧を行うことで、画家のラウル・デュフィとポワレのコラボレーションを示す新たな写真資料を見出したことも大きな成果であった。 したがって、課題は残るものの、おおむね順調な調査研究を行ったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目には、ポワレとウィーン工房の交流に関する調査を、オーストリアとフランスを中心に行う。ウィーン工房については、充実したアーカイブを有するオーストリア応用美術博物館を主な調査先として予定している。そこで資料収集を行いつつ、これまでほとんど言及されることのなかったポワレとウィーン工房の影響関係について検証し、ポワレが服飾以外の分野に進出することになった経緯を明らかにしたい。 また、前年度に引き続き、サロン・ドートンヌでポワレが行った展示に関する調査を行い、ポワレの展示の全貌を明らかにすると同時に、彼が当時のデザイン運動の影響を受けながら、いかにして生活全般に及ぶデザイン活動を展開したかを検討していきたい。
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Research Products
(4 results)