2014 Fiscal Year Research-status Report
多能性幹細胞を用いたヒト内在性レトロウイルスの定量的評価系確立と疾患解析への展開
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26870367
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
青井 三千代(小柳) 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (90432327)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒト多能性幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヒト内在性レトロウイルス(human endogenous retrovirus; 以下HERVと略す)の活性化状態の網羅的かつ定量的な評価系の確立と、様々な疾患におけるHERVの系統的検討への展開をめざして、研究を進めた。 具体的には、以前に研究代表者が明らかにした、神経細胞へと分化させた際に一部が未分化細胞として残存する少数のヒトES/iPS細胞で、HERV-HのLTR7の低メチル化によって活性化される複数の遺伝子群とHERV-H env60について、様々ながん細胞株(ヒト胚性腫瘍株2101Ep, NTera2や未分化型、分化型それぞれのがん細胞株)における発現を半定量PCRと定量PCRで調べた。その結果、いくつかのがん細胞株ではHERV-H関連遺伝子の発現が観察されたが、その発現量は上記の一部のヒトES/iPS細胞株と比較すると低いものであることがわかった。 また、本年度中にはHERVと多能性幹細胞に関して複数の論文報告があった。ヒトES/iPS細胞の一部の細胞集団において特定のHERVが活性化されており、それが細胞の性質と関連することがわかった。今回、がん細胞株でHERV-H関連遺伝子の発現量が低かった理由について、一部の細胞群でのみ発現している可能性が考えられるため、現在はHERV-HのみならずHERV関連の遺伝子の発現を追跡するためのレポーターコンストラクトを作成し、様々ながん細胞株に導入するための準備を進めている。 これにより、がんを始めとする様々な病態におけるHERVの新しい機能の理解を生みだし、これに基づいて疾患の新規診断マーカーや新たな治療法の開発に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HERVの活性化状態の網羅的かつ定量的な評価系の確立については、いくつかの細胞株で発現量を調べてはいるものの、ゲノムワイドな解析を行うために必要な次世代シークエンサー関連の技術が現在の研究環境では使用できないことから、予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
HERV関連の遺伝子の発現を追跡するためのレポーターコンストラクトを作成し、様々ながん細胞株に導入して、特に発現が上昇している細胞集団がないかを調べる。 特定のHERVが活性化している細胞集団が存在することがわかった場合、その細胞集団をセルソーターを用いて回収し、その性質について調べる。発現プロファイリングについては、サンプルを選択し、次世代シークエンサー関連の解析を外注して、既存のデータと比較しながら解析を進めていく。 同時に、様々な疾患におけるHERVの発現解析も進めていく。
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Causes of Carryover |
残額が少額であったため、使い切ることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、しっかり使い切るように心がける。
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