2014 Fiscal Year Research-status Report
自然リンパ球を標的とした好酸球性食道炎の病態機序の解明
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26870378
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大嶋 直樹 島根大学, 医学部, 助教 (10403461)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 好酸球性食道炎 / 自然リンパ球 / IL-33 / 好酸球 / アレルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自然免疫系リンパ球の一つであるnatural helper(NH)細胞に着目し、消化器系のアレルギー疾患として知られている好酸球性食道炎の病態形成におけるNH細胞との関連を明確にし、治療応用につなげることを目的とした研究である。NH細胞においてTh2系サイトカインを誘導するIL-33はIL-1ファミリーに属するサイトカインであり、アレルギー性炎症における中心的な調節性サイトカインと考えられている。平成26年度はIL-33全身投与における食道を含めた消化管への影響を解析するために、野生型マウスに対してrecombinant IL-33蛋白の腹腔内投与を行った。これらにより、著明な脾腫、末梢血における好酸球上昇を認めた。食道局所においては我々の仮説通り、食道粘膜に著明な好酸球浸潤を組織学的に確認した。また、フローサイトメトリーにおいてCD11b(+)Siglec-F(+)の好酸球が増加していることを認めた。さらに、Real-Time PCR法においてIL-5等のTh2系サイトカインの発現亢進を認めた。また、IL-33蛋白投与後の食道粘膜におけるPCR Arrayでは、Ear11、Ccl11、Ccl5などのアレルギー疾患の病態形成に重要な関連を示す遺伝子の増幅を認めた。これらの結果からIL-33は好酸球性食道炎の病態形成において重要な役割を担っていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、これまでの研究において、野生型マウスにIL-33蛋白を腹腔内投与することにより、著明な脾腫、末梢血における好酸球上昇などの全身における反応のみならず、食道粘膜局所に著明な好酸球の誘導を認め、さらにアレルギー疾患の病態形成に重要な関連を示す遺伝子の増幅を認めたことより、IL-33は好酸球性食道炎の病態形成において重要な役割を担っていることを明らかにした。現時点までの研究の進行状況は順調であり、仮説を検証するのに十分なものであった。今後は、以下の研究を行っていく予定である。 ①IL-33刺激による食道粘膜におけるサイトカイン、ケモカインの発現変化 野生型マウスの食道、FALCから食道上皮細胞、食道粘膜固有層リンパ球、NH細胞を分離、共培養する。それらの細胞をrecombinant IL-33で刺激し、Th2系サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13、IL-15)、ケモカイン(Eotaxin-3)、IL-33の受容体であるST2(IL-33Rα鎖)の発現量を定量的RT-PCR法、その培養上澄中のサイトカインをELISAで測定する。これらをNH細胞との共培養の有無により比較検討する。また、同様に上記サイトカインや病原体成分などで培養細胞を刺激しIL-33の発現を定量的RT-PCR法、ELISAで検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果を基に平成27年度においても現在進行中の実験を継続していく。内容は、野生型マウス(BALB/c)を用いて、NH細胞と食道の上皮細胞、免疫担当細胞のクロストークを解明していく。具体的には、前述通りIL-33刺激による食道粘膜局所におけるサイトカイン、ケモカインの発現変化を主にex vivoの手法を用いて確認していく。同時にマウスにおける好酸球性食道炎モデルを早期に確立することを目標とする。好酸球性モデルマウスは鼻腔内にOVA抗原を3回/週、3週間にわたって滴下することで作成する。本法によって食道粘膜内に多数の好酸球の浸潤を伴う食道炎が完成するが、現在までの予備実験において、現方法では好酸球浸潤の個体差が大きいため、各条件を変更して確認を行っている。いずれにおいても平成26年度以上の達成度が得られると考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年度については、配布予定の直接経費における1300000円のうち393894円が未使用となった。この理由に関しては、①当研究室で既に所有している物品を共有した、分子生物学的試薬やフローサイトメトリーなどの物品費の購入が少なかった、②予定していたマウスの購入が年度内に間に合わなかった、③参加予定であった学会に参加しなかった事などが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は配布予定の直接経費900000円に393894円を加えた研究費で遂行していく。具体的にはマウス(IL-33遺伝子欠損マウス、NH細胞欠損マウス)、フローサイトメトリーの抗体などの分子生物学的試薬の購入や、本研究の成果を発表する予定である国際学会の参加費用に充てる計画である。
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