2014 Fiscal Year Research-status Report
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26870385
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
後藤 和馬 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (20385975)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナトリウムイオン電池 / 炭素材料 / ナノ細孔 / 固体NMR / 黒鉛層間化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナトリウムイオン電池負極炭素にドープされたナトリウムの吸蔵状態や吸蔵サイトについて固体核磁気共鳴(NMR)を用いて明らかにし、充放電挙動や不可逆容量との関係を解明すること、および各種アルカリ金属が導入された炭素化合物の状態分析から炭素内のグラフェン層とアルカリ金属の相互作用を考察することを目的として実験を進めている。 平成26年度は、ナトリウムが多量に吸蔵される約1500℃以上で熱処理された無定形炭素の内部にナトリウムを電気化学的に導入し、固体NMRによる解析を進めた。炭素に吸蔵されたナトリウムがリチウムイオン電池内のリチウムよりさらに不安定であり、かなり注意深く実験を行っても容易に分解することが確認された。そのためサンプルの取り扱いには困難を極めたが、度重なる実験の繰り返しと改良により、平成26年度中に正確に観測をするノウハウをほぼ完成させることができた。NMR測定や電池充放電試験の結果から、ある一定以上の温度で熱処理された無定形炭素内部のナトリウムの状態は約1500℃以下での熱処理炭素に比べてさらに不安定となることが明らかとなった。これはナトリウムの吸蔵サイト自体の減少だけでなく、吸蔵サイト自体のサイズ縮小が起こったためと考えられる。 ナトリウムがエチレン-d4-ジアミンやテトラヒドロフラン-d8などの重水素化有機分子と黒鉛層間に共挿入された三元系黒鉛層間化合物を作製した。これらの23Naおよび2H固体NMR測定から、アルカリ金属イオンや有機分子の層内での構造および動的挙動を明らかにできたため、現在論文投稿中である。また関係する研究として、その場観察(in situ)NMRを用いてリチウムイオン電池中のリチウムイオンの観測を行い、過充電によりアルカリ金属の析出とその消失速度について明らかにできたため、論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無定形炭素中のナトリウムが予想以上に分解しやすく、そのままの状態を保ったままサンプル管に密封しNMR測定するノウハウを確立するのに当初想定していた以上の期間を要した。しかしながら基本的な測定法が確立したことから今後の実験は順調に進展するものと予定している。
一方で、黒鉛層間化合物内のアルカリ金属や分子の解析は順調に進展した。また、共同研究により当初の予定にはなかった新たな炭素系負極材料に吸蔵されたナトリウムの解析に成功しており、予定以上に進展している成果もあることから、全体としておおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、引き続き炭素内ナトリウムの状態分析を行う。無定形炭素のほか、それ以外の炭素負極に導入されたナトリウムについても実験を行い、詳しいナトリウムの吸蔵機構について明らかにする。また、炭素以外のナトリウム電池負極についても実験を開始し、将来的な炭素-金属ハイブリッド電極の開発につながる基礎データを得る。
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Causes of Carryover |
経理の年度末処理において消費税額込みと税抜き処理の修正を行った結果、小額の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬や不活性ガスなどの消耗品代として使用する。
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