2014 Fiscal Year Research-status Report
アズレンの双極子により活性化されたπ共役系機能性分子の触媒的合成法の開発
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26870389
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
村井 征史 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (40647070)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アズレン / 脱水素ケイ素化 / 多環芳香族化合物 / イリジウム |
Outline of Annual Research Achievements |
イリジウム触媒存在下、ヒドロシランをアズレンに作用させることで脱水素を伴うアズレンの炭素-水素結合のケイ素化反応が起こることを見いだした。反応は従来困難であったアズレン環の2位のみで選択的に進行し、対応する2-シリルアズレン誘導体を高収率で得ることができた。本反応は特異な位置選択性の発現に加え、ヘテロ原子の配位を要さずに芳香族の炭素-水素結合の官能基化が進行した珍しい例である。 反応の詳細を検討していく過程で、本ケイ素化反応はアズレンだけでなく、ナフタレンやアントラセン、ピレンを始めとする種々の多環芳香族炭化水素にも適用可能なことがわかった。また、反応は立体障害の最も小さな炭素-水素結合で選択的に進行し、電子求引性の置換基を有する多環の芳香族化合物が優先的にケイ素化されることも明らかとなった。本反応は、芳香環の修飾反応としてよく用いられる芳香族求核置換反応とは異なる位置選択性で進行し、多環芳香族炭化水素の新たな官能基化法として極めて有用だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画として当初予定していたアズレンのシリル化反応が、ナフタレンやアントラセン、ピレンを始めとする種々の多環芳香族炭化水素にも適用可能な、一般性の広い手法であることが明らかとなったため。本手法を用いることで、本研究で標的分子としていた「アズレン」だけでなく他のπ共役系分子についても、自在官能基化を鍵とした機能化が可能だと考えられ、他分野への波及効果も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立したイリジウム触媒による脱水素ケイ素化反応を鍵として、新規機能性π共役系分子の創製を目指す。すなわち、本手法で容易に入手が可能となった2-シリルアズレンに対し、パラジウム触媒による檜山クロスカップリング反応を適用して電子供与性、および求引性の置換基を導入し、アズレンの双極子の効果的な活性化ができないか検討する。また、現在のアズレンとヒドロシランを用いる分子間での反応条件を、ヒドロシリル基を有するアズレンに対して適用することで、近年電子デバイス素子の鍵骨格として注目されているシロールとアズレンとの融合を目指す。得られた生成物の半導体や超電導特性についても、並行して評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
前述したように、前年度はアズレンに対して見つかった反応の知見が、より一般的な多環芳香族炭化水素に対しても適用可能であるという予想外の成果が得られた。そのため、研究計画が当初想定していたものから多少変更となり、研究費の使用額に差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は初年度の成果により標的分子が増加し、合成手順の増加が見込まれるため、有機および無機反応剤の購入にこの差額を充てる予定である。
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