2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26870393
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
荒川 健佑 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (50609930)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Lactobacillus gasseri / ペプチド要求性 / 発酵 / 乳 / 豆乳 / オカラ / ペプシン / 共培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 ヒト小腸優勢乳酸桿菌Lactobacillus gasseri(ガセリ菌)は様々な保健機能が知られる一方、乳や豆乳等の食品素材中で生育が緩慢であることから、その利用性が制限されている。昨年度の研究によって、ガセリ菌が乳中で窒素源としてタンパク質や遊離アミノ酸ではなく、ペプチドを要求することを明らかにした。また、ペプチド成分の添加以外に、乳をペプシン等のプロテアーゼで処理することによって、ガセリ菌を良好に生育させる手法を確立した。そこで平成27年度は、ペプシン処理を用いた新たなガセリ菌による発酵豆乳・オカラの製造法を確立することとした。また、ペプチド添加やプロテアーゼ処理に頼らないガセリ菌発酵乳製造法として、新たに乳酸球菌との共培養法の確立を試みた。
【研究成果】 ガセリ菌は、大豆タンパク質を添加した基礎培地中では良好な生育性を示さなかったが、ペプシン処理した大豆タンパク質の添加によって良好に生育した。また、ペプシン処理した豆乳およびオカラ懸濁液を培地とした際に、未処理区より良好な生育が確認された。以上の結果は、ガセリ菌の生育因子であるペプチドの起源が乳タンパク質である必要はなく、大豆タンパク質でもよいことを示していた。また、本研究によって、ガセリ菌を用いた発酵豆乳および発酵オカラの新たな製造方法を確立するに至った。特に、オカラの発酵法の確立は、食品残渣の有効利用の観点から非常に意義のある成果だったと考えている。 次に、ペプチド添加やプロテアーゼ処理に頼らない、ガセリ菌を用いた発酵乳製造法として、高活性の菌体外プロテアーゼを有すると想定される好温性乳酸球菌との共培養法を確立した。現代の消費者は食品添加物を忌避し、発酵乳において乳以外の雑味を敬遠する傾向にあることから、本発酵法の確立もガセリ菌を用いた新たな発酵乳製造法として実用的で有意義な成果だったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、平成27年度に、ガセリ菌の要求ペプチドの分離・特定・特性解析を行う予定であったが、要求ペプチドが単一でなく複数あることが分かり、まだ予定した結果を得られていない。しかし、予定外に、ガセリ菌を用いた新たな発酵豆乳・オカラ製造法を確立し、また、ガセリ菌と乳酸球菌による新たな発酵乳製造法を見出すことができたことから、全体的には概ね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ガセリ菌がペプチドを要求する要因に関しては明らかにできつつある。平成28年度は、まずその点を明確にし、その後に(並行して)当初の予定通り、ガセリ菌の要求ペプチドの分離・特定・特性解析を行っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
他の助成金の獲得により、両研究で重複する試薬類等消耗品費の支出を抑制できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、当該年度からの繰越金を使って、他の予算から支出予定であった試薬等の消耗品を購入することとする。内訳は、細菌培養用培地やクロマトグラフィー用カラムおよび有機溶媒が主である。他に、研究成果報告のための論文出版費や学会参加費・旅費に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)