2014 Fiscal Year Research-status Report
膵癌においてナノ粒子漏出性制御を司る分子基盤の解明
Project/Area Number |
26870394
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
田中 さやか 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60711629)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 腫瘍血管 / 血管内皮細胞 / 血管透過性 / ナノ粒子 / 薬剤送達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、sVCAM1による漏出性亢進をもたらす細胞生物学的変化の実態について解析を行った。はじめに、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に対しsVCAM1を作用させ、in vitroでの血管透過性評価において一般的に用いられる、蛍光標識デキストラン透過性アッセイおよび内皮電気抵抗(TER)評価を行った。その結果、sVCAM1は巨大(2M Da)蛍光標識デキストランの透過性を亢進する一方で、TERには殆ど影響を与えないことが明らかになった。さらに、免疫細胞化学および定量的リアルタイムPCR解析の結果、内皮細胞間の接着を維持するタイトジャンクション分子の発現についてsVCAM1による発現の変化は見られなかった。これらから、sVCAM1はトランスサイトーシンスの亢進によりナノ粒子の透過性を向上させる可能性が考えられた。 そこで、sVCAM1の受容体として機能すると考えられているintegrin alpha 4が、sVCAM1による血管透過性亢進を介していると仮定し、siRNAによりintegrin alpha 4の発現を抑制したHUVECにおけるsVCAM1の影響を評価した。その結果、integrin alpha 4単独の発現抑制自体により、蛍光標識デキストランの透過性がsVCAMを作用させた時に比べさらに大きく亢進することが明らかになった。Integrin alpha 4の発現を抑制したHUVECでは、TER評価でも透過性亢進が認められ、さらにタイトジャンクション分子や接着結合分子の細胞表面への局在に不均一性が観察され、細胞間隙が顕著に拡大することが明らかになった。さらに解析を進めた結果、integrin alpha 4の発現を抑制することにより、アクチン骨格が細胞近傍から遊離する傾向が観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画を立案した当初はsVCAM1による血管透過性の制御を考え、sVCAM1による漏出性亢進をもたらす細胞生物学的変化の実態について解析を行った。 その解析を進める過程で、血管透過性制御因子としてより有力な分子として、integrin alpha 4を新規の候補分子として見出し、予想外の知見を得ることが出来た。Integrin alpha 4の下流シグナルに関しても、アクチン骨格の制御に関連する経路である可能性も示唆されたものの、今後まだ実証の必要がある。 以上から、本来は平成26年度中にsVCAM1の結合分子を同定し、下流シグナル経路に関連する具体的な経路についておよその見通しを立てる予定であったことを考え、本年度の進捗としては、一定の成果が得られたものの、予定よりやや遅れていると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、integrin alpha 4の血管透過性制御における役割を中心に解析を進めたいところである。しかしながら、一身上の都合により退職することとなり、研究課題応募資格を失うため、一定の成果を得られた本研究課題は本年度にて終了し、以後は異なる研究課題として共同研究先での課題発展を考えている。
|
Causes of Carryover |
研究開始当初は、研究打ち合わせにより生じる旅費を計上していたが、電話会議などで代用し、また学会発表の回数と参加学会を変更したため、次年度使用額が生ずることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は平成26年度で終了するため、使用予定はない。
|