2015 Fiscal Year Research-status Report
天然記念物オオサンショウウオの保全に向けて大学博物館が開発する環境教育プログラム
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26870400
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 則雄 広島大学, 総合博物館, 助教 (70437614)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 特別天然記念物 / オオサンショウウオ / 幼生 / 年齢査定 / 環境教育プログラム / 副読本 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画通り、1.本種の分布と生息数に関する調査、2.繁殖期における繁殖行動調査、3.幼生の離散調査を継続的に実施するとともに、昨年度末に実施した巣穴下流部に存在する田への用水路に設置した簡易トラップによる調査を行った。本調査では2ヶ月間に46個体の幼生を確認し、田への導水が本種の幼生に甚大な影響を与えていることを確認した。本結果は昨年度の日本オオサンショウウオの会にて発表を行った。また、幼生の巣穴からの離散状況を24時間カメラを用いて確認した結果、夜間に本種の幼生が移動することを含め、多くの新事実が明らかとなった。本成果については本年度の学会で報告予定である。現在は、離散幼生に個体識別用のワイヤータグの挿入を目指して、アホロートルを用いた挿入実験を継続中である。また、幼生の食性・生息環境調査も開始したところである。 年齢査定については、昨年度までの1-21齢個体の年齢査定結果に関する論文を執筆中である。また、新たな標本の引受けも行ったので個体数を増加させ、精度を高める実験を継続中である。 環境教育プログラムについては、地元の東広島市教育委員会と協働し、「オオサンショウオがいるらしい」を1万部発行した。本副読本は、東広島市の全小・中学校に全学級配布された。また、地元の東広島市立豊栄小学校と連携して継続して実施している小学4年生向けの野外観察会を含む4度の出前授業も今年度も実施し、前述の副読本を活用したプログラムを実施した。本小学校は、年度末に環境省が主催した「こどもホタレンジャー2015」にて最高賞の環境大臣賞を受賞することができ、本プログラムの成果を示すことが出来たと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
幼生の離散について、下流への離散動向、巣穴からの離散のタイミング、用水路(田)への流失等、当初の予想よりも多くの成果が上がっている。また、年齢査定についても、弱齢個体の齢査定については、一定の成果があがり、論文執筆中である。さらに、環境教育プログラムの中核であった副読本も一年前倒しで発行することができ、連携している地元の小学校の環境大臣表彰にも繋がり、計画以上の成果があがり始めているため。
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Strategy for Future Research Activity |
野外における分布調査はこれまで通り実施を予定している。本年度の新たな課題として成体の「痩せ問題」が顕在化している。現在、60固体中7個体の「痩せ」が進行しており、1個体の緊急保護を本年度に入り実施したところである。継続的に残りの個体をモニタリングし、本問題の解決策を検討したい。幼生の離散確認調査については、田への流入が明らかとなったため、本年度に入り緊急的に堰堤上部に溜まる幼生群の半数を下流に放流した。今後はこのような放流個体に個体識別用のタグを挿入し、放流効果を確認する調査を実施する予定である。 環境教育プログラムについては、小学校での出前授業を継続し、上述の成果を織り込んだプログラムの普及と改善、評価を継続的に実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
幼生の夜間調査に学生アルバイトを雇用予定であったが、調査スケジュールがタイトであったため、申請者本人のみで行ったものが多くなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に入り、幼生の生息環境測定や、食性を調べるためにすでに学生を雇用し、調査を開始しており、人件費・謝金として使用予定である。
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Research Products
(2 results)