2014 Fiscal Year Research-status Report
高等教育におけるアクセシビリティ支援の人類学的研究
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26870402
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡田 菜穂子 広島大学, アクセシビリティセンター, 特任助教 (90547142)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高等教育 / 障害のある学生 / アクセシビリティ支援 / アクターネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本の大学における障害のある学生(以下、障害学生)の支援の現場に注目し、障害等に由来するニーズにいかに対応するかについて、人類学的観点から調査・分析を行い、障害学生支援の現状整理を行うとともに支援の構造を明らかにすることを目的とする。近年、日本の多くの高等教育機関において障害学生の修学支援の対応が急務とされている。また、グローバルな障害に関する法整備の動きを受け、物理的・社会的アクセシビリティ(利用しやすさ・わかりやすさ)への関心と需要が高まっている。さらにICTの進歩や支援技術の導入は、大学における障害学生支援の方法にも大きな影響を与えている。これらを踏まえ本研究では、アクターネットワーク理論をヒントに、障害学生支援の運営とコーディネート業務に目を向け、人、モノ、制度、情報といったアクターがいかに組み合わされて支援実施に至るのかを明らかにすることを目指す。
平成26年度は、主に以下の3点を実施した。 (1)日本国内の大学における障害学生支援の現状の整理:独立行政法人日本学生支援機構の全国調査および障害学生支援の事例集等を資料として、全国的な支援の現状整理を図った。また、近隣大学での障害学生支援に関する情報の収集を行った。 (2)支援の現場での支援運営事例の蓄積:広島大学の学内支援の拠点を中心に、日々支援内容が決定され支援が実施されるプロセスに注目し、日常的なアクセシビリティ支援の事例の蓄積を行った。 (3)支援に関するアクターの洗い出し:(1)(2)より、支援に関するアクターの洗い出しを試みた。支援体制、支援機器、支援の質、支援者の負担のほかに、「時間」や「場所」といった要素がアクターとなりうる可能性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、全国調査報告書等の資料を用いて日本の大学における障害学生修学支援の現状を整理するとともに、支援の現場においてアクセシビリティ支援に関わる事例の蓄積を行った。さらにこれらをもとに、支援に関するアクターの洗い出しを行った。 支援の現場での事例蓄積の作業では、特に支援者の派遣業務について詳細データを収集し、支援者派遣に係るリスクを整理するとともに、リスク対応に関して議論した。 予定していた支援の仕組みの解明については十分でなく更に分析が必要であるが、本研究ではアクターの洗い出しと支援の仕組みの解明のステップを、研究期間を通じて検討する課題と位置付けており、その他の工程は順調に進展していることから、研究活動は「概ね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26 年度の研究成果を踏まえ、引き続き、大学における障害学生支援の現場をフィールドに、アクセシビリティ支援に関する事例蓄積を行いながら、支援の仕組みの解明と支援のモデル化を図る。 平成27年度は、複数大学における調査や担当者へのインタビューを予定している。 平成27年度に複数大学におけるアクセシビリティ支援の仕組みに関する情報を整理し、これまで蓄積してきた広島大学の事例と比較して、支援モデルの汎用性を検証する予定である。
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