2015 Fiscal Year Research-status Report
親の社会階層と乳児-幼児期の子どもの健康と発達との関係
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26870404
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
加藤 承彦 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 社会医学研究部, 室長 (10711369)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 母子保健 / 乳幼児の健康と発達 / 社会疫学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、21世紀出生児縦断調査を用いて、下記の2つの分析を実施した。 ①母親の年齢が子どもの健康に与える影響 日本および他の先進国では、母親の平均出産年齢が上昇しつつ有る。母親の年齢の上昇とともに、自然死産や先天性疾患など出産関連のリスクが高まる傾向が明らかになっている(Carolanet al., 2011)。その一方で、母親の第一子出産年齢の上昇は学歴や収入など社会階層の指標の上昇と相関する傾向にある。そして、社会階層の上昇は、子の健康と発達に良い影響を与えることが国内外の先行研究で明らかになっている(Power et al., 2013)。母親の出産年齢と子どもの健康と発達に関する論文は、イギリスの研究1報のみ(Sutcliffe et al., 2012)で、母親の平均出産年齢の上昇が顕著な日本でその影響は、まだ研究されていない。よって、21世紀出生児縦断調査を用いて検証した。1歳半時点での怪我や入院において、母親の年齢が高い群のほうがリスクが低かった。5歳半の時点では、共変量を調整後、顕著な傾向は見られなかった。上記の内容で、日本公衆衛生学会にてポスター発表を行った。現在、論文をBMC Pediatricsに投稿中。 ②乳児期における母親の関わりと子どもの学校生活への適応の関連 乳幼児期の母親の子どもに対する関わりは、アタッチメントを形成する上で非常に重要であり、言語能力を始めとする社会性の発達にも大きな影響を与えることが明らかになっている。現在、日本の学校において、暴力行為が特に低学年において増加傾向にあり、不登校児の数も減る傾向にない。よって、21世紀出生児縦断調査のデータを使って、乳児期に積極的に関わる母親とそうでない母親を比較し、その子どもたちの小学校生活への適応との関連を分析した。結果、母親の関わりが消極的である場合、子どもが学校生活に馴染めていない傾向が明らかになった。現在、Child: Care, Health, & Development誌に投稿中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画において、親の社会階層と児の健康と成長を21世紀出生児縦断調査を用いて、検証するとしていた。しかし平成26年度で親の社会階層と乳児の児の健康と発達の関係を検証する中で、児の出生前の親の社会階層と健康状態の把握が重要であることが明らかになってきた。現在日本社会は、少子化が進行しており、どのような男性・女性が結婚→妊娠→出産(第一子~)というプロセスを経ているのかを調査することが、親の社会階層と出生後の児の健康と発達の関係をより深く理解する上で重要であることが明らかになった。よって、21世紀成年者縦断調査の調査票情報を追加で取得したが、成年者縦断調査のデータの構造が予想以上に複雑で申請に多大な時間を要した。また、データの解析を開始したが、21世紀成年者縦断調査および21世紀出生児縦断調査の分析にあたって、最新の統計手法を用いる必要が発生した。当初、国立研究開発法人国立成育医療研究センター内の研究者の協力を得る予定であったが、この統計手法に関して知識を有するものがおらず、外部の高度な統計知識を有しかつ協力が得られる研究者を見つけるのに時間が掛かった。これらの理由から、研究計画に遅れが生じた。そのため、日本学術振興会に補助事業期間延長を申請し、許可を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、取得した21世紀出生児縦断調査および成年者縦断調査の分析を順調に進めており、1年間の延長はあったものの立案した研究計画を無事に終えることが出来ると予想している。
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Causes of Carryover |
研究計画遂行の遅れに伴い、一部、当該年度の予算を執行出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画通り、書籍代や学会参加費などにおいて予算を執行していく予定である。
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Research Products
(2 results)