2014 Fiscal Year Research-status Report
卵胞発育モデルを用いたホルスタイン種牛における分娩後の卵胞波再帰メカニズムの解明
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26870406
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
谷口 雅康 山口大学, 獣医学部, 助教 (40625018)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 卵胞発育モデル / 無血清培地 / ホルモンキャリアー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、開発したウシ体外卵胞発育モデルを活用し、培地に添加する血清を生体由来の血清に置き換えることで、卵胞形成を指標に分娩後の卵胞波再帰の要因を解明することを目的としている。 平成26年度はまず、過去の繁殖成績に基づいて研究に供用する農場の選定を行った。具体的には、過去3年間の産乳成績と繁殖成績が概ね安定しており、飼養管理方法などの他の要因の変動が少ないと思われる農場を選定した。その農場から、計画通り泌乳ステージを3つに分類し、分娩後10日前後の泌乳前期ステージから直腸検査・超音波画像診断によって卵巣所見を記録し、同時に採血を行い、血清分離後凍結保存している。同一牛が分娩後60日前後を迎えた際(泌乳中期ステージ)に再度同様に観察を行い、発情・卵巣活動が再開に分けて採血を行った。それと同時に各個体ごとに泌乳量などの情報の収集も行っている。 卵胞発育モデルをさらに改良するため、培養液に血清を添加しない無血清培地の開発を行った。今後は収集している生体由来の血清の卵胞発育モデルへの添加効果の検証を目的としているため、培地へのウシ胎児血清の添加は本来好ましくない。そこで、ウシ胎児血清の代わりとなる代替物質を発見するとともに、ウシ胎児血清との併用効果についても検討した。その結果、無血清でも卵胞発育モデルとなりうることを発見し、さらに血清と併用可能であることが判明した。さらに、今後添加を検討しているホルモン剤の添加効果を安定させるためのフラグミン/プロタミン複合体の効果について検討しその効果を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は11月から翌3月末まで研究留学を行ったため、泌乳牛の卵胞波回帰に及ぼす影響の要因解析調査・採材が遅れている。泌乳中期での発情再開牛の比率が比較的少ないことも影響している。さらに、その他の要因(疾病など)による試験途中での淘汰などもまた影響していると思われる。しかし、農場の選定はすでに終了しており、調査・採材を開始していることから、今後の継続的調査は比較的容易であると考える。 一方卵胞発育モデルについては、無血清培地の開発に成功したことから、上記の生体由来血清の添加効果の検証を開始する準備が進んでおり、順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
遅れている卵胞波再開に及ぼす要因解析を優先的に進めていく。農場選定は終了していることから、供試牛を当初計画よりも増やすことで対応可能であると考える。さらに、試験途中での脱落(疾病等)のリスクを避ける方策として、比較的若齢の搾乳牛を優先的に供試する。 そして、そこで得れらる生体由来血清を用いた卵胞発育モデルの改良も同時に進める。まずは生体由来血清の卵胞発育モデルへの添加方法を確立する。確立した無血清培養方法を改良することで可能であると考える。次いで、揃いつつある泌乳前期の血清を用いて、卵胞発育モデルへの添加効果を検証する。さらに、27年度には最後のステージである泌乳後期まで卵巣検査・血清採取が終わる個体が出てくることから、個体ごとのステージによる要因の検証・各ステージ群による混合血清の添加効果について検証を進める。すなわち、早期に全ステージでの採材が終わる個体を増やすことが重要である。
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Causes of Carryover |
平成26年度当初は当該研究を他の研究費を用いて並行実施していた。その後、11月より米国へ研究留学を行うこととなったため、支出計画との差異が生じた。しかし留学中に得た分娩後の搾乳牛の管理方法の知識、また超音波診断装置を用いた分娩後早期繁殖診断の技術は今後研究を推進するにあたり非常に有効である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
卵胞発育モデルへの改良は順調に進んでいる。特に無血清培地を開発できたことと、効果的な持続的ホルモン剤投与方法としてのフラクミン/プロタミン複合体の開発は今後の研究を大きく推進させると考える。よって、遅れている搾乳牛の卵胞波回帰に及ぼす要因の解析のための観察・採材に大きく力を割くことで、27年度は計画通りに勧められると考える。
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