2014 Fiscal Year Research-status Report
不活性Si(110)表面の1次元構造を利用した高誘電体超薄膜作製と薄膜物性評価
Project/Area Number |
26870416
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
垣内 拓大 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (00508757)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Si(110) / 高誘電体材料 / 表面界面物性 / 酸化ハフニウム / 局所価電子状態 / コインシデンス分光 / 光電子分光法 / 超薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、表面シングルドメイン構造を示すSi(110)-16×2[Si(110)-16×2:SD]上に酸化ハフニウム(HfO2)の超薄膜を作製し、その表面構造および表面界面物性を解明することを目的としている。 H26年度は、高融点金属であるハフニウム(Hf)を蒸着することができる超高真空装置を立ち上げた。本装置を用いて、Hfの蒸着量を0.001~0.007(Å/s)の範囲でコントロールしながら薄膜試料を作製することができることを確認した。Si(110)-16×2:SD上にHfを1原子層程度蒸着させるとSi(110)基板の構造は消失するが、650℃でアニールすることによってSi(110)基板の16×2構造を反映した表面構造を示した。しかし、得られたHf/Si(110)の表面構造は、シングルドメインではなくダブルドメインであった。また、Hfが吸着したSi(110)-16×2:SD表面のSi 2p光電子スペクトルを測定した結果、HfがSiに吸着した状態が2つ、蒸着中に真空槽内から脱離したと酸素が吸着したと考えられるHf-O-Siの状態が存在することが分かった。また、Hfの蒸着量を徐々に変化させて測定して得られたSi 2p光電子スペクトルの変化を解析することによって、HfはSi(110)-16×2:SD上へランダムに吸着することが分かった。価電子帯の光電子スペクトルを測定した結果、Hfが吸着することによってSi(110)-16×2:SD表面上に存在していた表面準位が消失し、Si内部と似た半導体物性を示すことが示唆された。 また、Si(110)-16×2:SD清浄表面を水素原子および水分子を利用してシングルドメイン構造を保持した不活性表面を作製できた。水素原子や水分子は、Si(110)-16×2:SD清浄表面のシングルドメインを形成するステップ近傍に優先的に吸着することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の予定では、Si(110)-16×2:SD清浄表面を水素原子(H)で不活性化した後に、HfO2超薄膜を作製する予定であった。現状では、比較対象データとして用いるための(1)Si(110)-16×2清浄表面上に蒸着したHf超薄膜およびその酸化表面の化学状態、表面構造および表面物性の実験結果、(2)Si(110)-16×2:SD清浄表面を水素原子および水分子で不活性化した表面の化学状態および表面物性の実験結果しか得られていない。 この理由としては、Hfは融点が2200℃以上と高温であるため真空中で蒸発させることが非常に困難であることがあげられる。また、蒸着源に付着したHfが大気中で酸化膜を作製し、蒸着率を安定してモニターするのに障害となってしまった。これを修復するのに時間を要してしまった。さらに、Hfを一度蒸着させたSi(110)基板からHfを完全に清浄化することは不可能であったため、一回一回試料を作製し直すのに非常に時間を要した。効率よく実験を行うためには、蒸着装置の定期的なメンテナンスが必要である。 また、放射光施設Photon Factoryのビームタイムが大幅に削減されたことにより、作製した試料の化学状態、表面物性を計測する時間が大きく減少した。
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Strategy for Future Research Activity |
Si(110)-16×2:SD清浄表面にHfを吸着させてシングルドメイン構造が現れる条件を検討するため、1)Hfの蒸着量、2)Si基板のアニール温度、などを変化させた試料作製を実施する。シングルドメイン表面を作製することができれば、これを酸化することでHfO2超薄膜に変換し、その表面構造および表面界面の化学状態・物性を評価する。シングルドメイン表面が作製できなければ、Si(110)-16×2:SD清浄表面を水素原子、水、さらには金などで不活性化し、その上にHfを蒸着させる。不活性化材料として金を蒸着する場合は、膜厚やアニール処理温度などの作製条件も検討することでシングルドメインを得る方法を調整する。 Si(110)-16×2:SD清浄表面を不活性化した後、シングルドメイン表面を示すHfO2超薄膜を得ることができれば、光電子スペクトルを測定することで表面界面の化学状態および物性を評価する。また、オージェ電子-光電子コインシデンス分光法を用いて特定原子を選別したオージェ電子スペクトルを測定することで、表面界面にある原子を選別した局所価電子状態を観測する。
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